著者:牧 潤二 氏医療ジャーナリスト
厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協、会長=森田朗・学習院大学法学部教授)の診療報酬改定結果検証部会(部会長=牛丸聡・早稲田大学政治経済学術院教授)は平成24年6月27日、第34回部会を開き、平成22年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査(平成23年度調査)の報告書をまとめた(写真)。それらの調査結果の速報はすでに平成23年秋に中医協・総会において報告され、平成24年度診療報酬改定においても生かされているが、同部会として今回、その詳細を報告書としてまとめ、コメントなども加えた。また、引き続き開催された中医協・総会で、同部会としてその報告を行い、了承された。平成22年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査では、さまざまな項目について調査が行われているが、平成22年度診療報酬改定で新設されたがん患者リハビリテーションについても調査し、それに対するリハビリテーション専門職の関与の実態が明らかになったのが、一つの大きな成果といえよう。今回は、がん患者リハビリテーションにおけるPT、OT、STのかかわりという観点から、同報告のポイントについて紹介しよう。
●理学療法士76.5%、作業療法士44.1%が「計画」作成にかかわる
がん患者についてのリハビリテーション計画作成への職種別の関与状況を見ると、「必ず関与」という回答が最も多いのは医師で85.3%。以下、理学療法士(「必ず関与」76.5%)、看護師(同72.1%)、作業療法士(同44.1%)、言語聴覚士(同26.5%)、准看護師(同10.3%)と続く。(表1)
表1 職種別にみた、がん患者に係るリハビリテーション計画作成への関与
施設数 | 割合 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
必ず関与 | 必要時関与 | 関与なし | 無回答 | 必ず関与 | 必要時関与 | 関与なし | 無回答 | |
医師 | 58件 | 6件 | 1件 | 3件 | 85.3% | 8.8% | 1.5% | 4.4% |
看護師 | 49件 | 12件 | 4件 | 3件 | 72.1% | 17.6% | 5.9% | 4.4% |
准看護師 | 7件 | 9件 | 35件 | 17件 | 10.3% | 13.2% | 51.5% | 25.0% |
理学療法士 | 52件 | 13件 | 0件 | 3件 | 76.5% | 19.1% | 0.0% | 4.4% |
作業療法士 | 30件 | 17件 | 12件 | 9件 | 44.1% | 25.0% | 17.6% | 13.2% |
言語聴覚士 | 18件 | 29件 | 10件 | 11件 | 26.5% | 42.6% | 14.7% | 16.2% |
社会福祉士 | 3件 | 35件 | 21件 | 9件 | 4.4% | 51.5% | 30.9% | 13.2% |
キャンサーボードについては、「設置している」が60.3%、「設置していない」が35.3%となっている。がん診療連携拠点病院ではキャンサーボードを設置していることが指定要件となっており、それは病院の属性を反映している結果ともいえる。キャンサーボードの開催頻度については、「月1~2回」または「週1回程度」で8割を占める。
また、キャンサーボードへ参加する職種としては、医師、看護師がそれぞれ100%(41施設中41施設)となっている。それ以外では、理学療法士(参加割合53.7%)、作業療法士(同39.0%)、社会福祉士(同39.0%)、言語聴覚士(同36.6%)などが主な職種である。(表2)
表2 キャンサーボード参加職種【複数回答】
施設数 | 割合 | |
---|---|---|
医師 | 41件 | 100.0% |
看護師 |
41件 | 100.0% |
准看護師 | 4件 | 9.8% |
理学療法士 | 22件 | 53.7% |
作業療法士 | 16件 | 39.0% |
言語聴覚氏 | 15件 | 36.6% | 社会福祉士 | 16件 | 39.0% |
その他 | 28件 | 68.3% |
総数 | 41件 |
がん患者リハビリテーション料が創設され、改善された点については(複数回答)、「術前からリハビリテーションを提供できるようになった」が最も多く50.0%。以下、「スタッフのリハビリテーションに対する意識が向上した」(48.5%)、「化学療法等徐々に身体に変化がある場合でも早期介入が可能になった」(45.6%)、「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等のリハビリ関係職種の病棟の来棟頻度が増えた」(35.3%)が、主なものである。(表3)
表3 がん患者リハビリテーション料の創設による改善点【複数回答】
施設数 | 割合 | |
---|---|---|
術前からリハビリテーションを提供できるようになった | 34件 | 50.0% |
スタッフのリハビリテーションに対する意識が向上した | 33件 | 48.5% |
化学療法等徐々に身体に変化がある場合でも早期介入が可能になった | 31件 | 45.6% |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等のリハビリ関係職種の病棟に来棟頻度が増えた | 24件 | 35.3% |
患者の状態像の早期回復が図られた | 20件 | 29.4% |
バーゼル指数やFIM等による評価を導入し、患者の状態像の把握ができた | 12件 | 17.6% | 合併症が現象した | 9件 | 13.2% |
転倒等のインシデントが減少した | 3件 | 4.4% |
その他 | 7件 | 10.3% |
特に変化はない | 14件 | 20.6% |
無回答 | 1件 | 1.5% |
総数 | 68件 |
●機会があれば「研修」を受けよう
それらの調査結果から、中医協・診療報酬改定結果検証部会では、がん患者リハビリテーション料の創設、がんリハビリテーションの実施について「早期からリハビリテーションを行うことで早期回復を行うという、創設の目的にあった評価が上がっている」とコメントしている。
がん患者リハビリテーションが今後、定着することが期待される。リハビリテーション専門職が活躍できる分野が広がった、といえよう。ただし、PT、OT、STであれば誰でもがん患者リハビリテーションができる、というわけではない。少なくとも、診療報酬を算定しようとするのであれば「がん患者リハビリテーションに関する適切な研修」を修了しておく必要がある。その研修を受ける機会があるのなら、有効に活用したい。