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訪問リハビリテーション利用者の主体的趣味活動の有無と生活空間の拡がりに関する調査

著者:堀 健作 氏(写真)1)(PT),野尻 晋一 氏1)(PT),大久保 智明 氏1)(PT),江口 宏 氏1)(PT),谷口 善昭 氏1)(PT),村尾 彰悟 氏1)(PT),松尾 恵利香 氏1)(PT),緒方 義尚 氏1)(PT),百留 あかね 氏1)(OT),福田 恵美子 氏1)(OT),江原 加一 氏1)(OT),山永 裕明 氏2)(医師),米満 弘之 氏2)(医師) 
1)医療法人社団 寿量会 熊本機能病院併設 訪問看護ステーション清雅苑 訪問リハビリテーション部
2)医療法人社団 寿量会 熊本機能病院

PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.8 A2(Aug. 23,2013)

Keywords: 訪問リハビリテーション,主体的趣味活動,LSA

【要旨】
本研究では,在宅での主体的趣味活動の有無が生活空間の広がりに,どのような関係があるか調査分析した.訪問リハを6ヶ月継続した36名を対象とし,6ヶ月時点で主体的趣味活動を持っていた群(以下有り群)16名,主体的趣味活動を持っていなかった群(以下無し群)20名に分類した.生活空間の拡がりの指標として,Life space Assessment(以下LSA)を用いて,外出についての調査を行った.その結果,主体的趣味活動の有り群と無し群での差を認めなかった. LSA総合得点では,有り群では初回と3ヶ月,初回と6ヶ月で有意差を認め,無し群では,初回と6ヶ月に有意差を認めた.有り群のレベル2(敷地内)では,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月の頻度,初回と6ヶ月の自立度に有意差を認めた.有り群のレベル3(隣近所)では,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月の頻度に有意差を認めた.無し群のレベル2(敷地内)では,初回と6ヶ月の頻度に有意差を認めた.訪問リハ開始早期から主体的趣味活動を促すことで,隣近所または自宅周辺での生活空間が拡大していく可能性が示唆された.

【はじめに】
当センターでは,生活再建とQOL向上を目的に訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)を提供している.
戦略の一つとして主体的趣味活動の支援を積極的に行い,地域参加につなげることで継続的な生活圏の拡大を図っている.そこで,在宅での主体的趣味活動の有無が生活空間の広がりに,どのような関係があるか調査分析した.

【対象および方法】
対象は,当センターで訪問リハを6ヶ月継続した36名(74.5±10.7歳)とした.内訳は,男性17名・女性19名,疾患は脳血管障害:16名,整形疾患:10名,神経難病:2名,その他(呼吸器疾患,心疾患):8名である.6ヶ月時点での主体的趣味活動を持っていた群(以下有り群)16名,主体的趣味活動を持っていなかった群(以下無し群)20名である.
今回,生活空間の拡がりの指標として,米国のアラバマ大学で開発されたLSAを用いて,外出についての調査を行っている.LSAは空間,頻度,自立度の3項目からなり,レベル別に生活空間を設定しており,レベル1を寝室以外の自宅内,レベル2を自宅周辺,レベル3を隣近所,レベル4を町内,レベル5を制限なく遠方までとして,過去1か月の間の活動範囲とその活動の1週間での頻度と自立度を乗じて評価するものである.
対象を主体的趣味活動の有無で有り群と無し群に分類し,初回・3ヶ月・6ヶ月のLSA得点(総合得点とレベル毎)に対して,二元配置分散分析で分析した.また,有り群と無し群での,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月のLSAを構成する頻度と自立度の差をウィルコクソンの符号順位和検定で分析した.

【結果】
二元配置分散分析の結果,主体的趣味活動の有り群と無し群での差を認めなかった.
ウィルコクソンの符号順位和検定の分析結果より,LSA総合得点では,有り群では初回と3ヶ月,初回と6ヶ月で有意差を認め,無し群では,初回と6ヶ月に有意差を認めた.

LSA総合得点を趣味活動の有り群・無し群に分類し、二元分散分析で解析した結果

レベル毎には,有り群のレベル2(敷地内)で,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月に有意差を認め,無し群では初回と6ヶ月に有意差を認めた.また,有り群のレベル3(隣近所)で,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月に有意差を認め,無し群では初回と6ヶ月に有意差を認めた.有り群のレベル4(町内)で,初回と6ヶ月に有意差を認め,無し群では有意差を認めなかった.
有り群のレベル2(敷地内)では,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月の頻度,初回と6ヶ月の自立度に有意差を認めた.有り群のレベル3(隣近所)では,初回と3ヶ月,初回と6ヶ月の頻度に有意差を認めた.
無し群のレベル2(敷地内)では,初回と6ヶ月の頻度に有意差を認めた.これまでウィルコクソンの符号順位和検定の分析結果を下記に表で示した.

初回と3ヶ月のウィルコクソンの符号順位和検定の分析結果 初回と6ヶ月のウィルコクソンの符号順位和検定の分析結果

【考察】
今回の調査で,訪問リハ開始から6ヶ月時点での主体的趣味活動の有無と生活空間の拡大に以下に記す特徴があった.有り群では,LSA総合得点が3ヶ月から有意に改善がみられ,無し群では,3ヶ月で有意差がない.このことから,早期に主体的趣味活動を有するよう支援することで,生活空間が改善することが分かった.島田らの報告からも,趣味的活動はLSAに対して直接的な関連は認められなかったものの,運動機能を介して間接的に関連する要因であった1)としており,主体的趣味活動を行うことがLSA拡大へ影響することが示されている.
次に,LSA総合得点の内訳をみると,早期にLSA総合得点の改善がみられている有り群では,レベル3(隣近所)までの頻度とレベル2(自宅周辺)での頻度と自立度の改善を認め,レベル2・3での改善が早期に生活空間を拡大する因子となっていた.具体的には,絵画の題材探しの為に外出したり,近所の散歩を再開したりと,趣味活動に関連して,外出頻度が改善するとともに,その中で,移動能力が向上してくることが考えられた.一方,無し群でも,初回から6ヶ月では,有意に総合得点が改善している.改善の要因は,レベル2の敷地内までの頻度が関与した.頻度の改善は初回から6ヶ月と改善する時期が遅く,その範囲も自宅周辺にとどまっていた.そのため,主体的趣味活動をもたずに経過したケースでは,主体的趣味活動を持っているケースに比べ,意欲をもって外出することが少なく,生活空間の拡大するスピードが低下することが考えられた.

●引用文献
1)島田裕之:地域在住高齢者の生活空間の拡大に影響を与える要因:構造方程式モデリングによる影響:理学療法学,第36巻第7号 370~376頁,2009年

●参考文献
1)公益社団法人 日本理学療法士協会ホームページ:E-SAS 高齢者のイキイキとした地域生活づくりを支援するアセスメントセット(http://www.japanpt.or.jp/esas/index.html)
2)江原加一:訪問リハビリにおける外出支援の検討:第130回熊本訪問リハビリテーション研究会,2009年
3) 江原加一:訪問リハビリにおける外出支援の検討:第44回日本作業療法士学会,2010年
4)米田恵美子:訪問リハ利用者の生活空間の経時的変化:第15回全国訪問リハビリテーション研究大会,2010年
5)堀健作:独居と同居―訪問リハ利用者の生活空間の変化:第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会,2009年

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