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チームアプローチで工夫すべき点に関する一考察

―院内摂食・嚥下勉強会の開催経過における反省点から―

著者:阿志賀 大和 氏(写真)1),小西 一晃 氏2),大平 芳則 氏1) 
1)明倫短期大学 保健言語聴覚学専攻
2)奈良春日病院 リハビリテーション科

PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.3 No.6 C1(Jun. 27,2014)

Keywords: 摂食・嚥下,勉強会,チームアプローチ

【はじめに】
摂食・嚥下リハビリテーションを行ううえで多職種が連携しアプローチすることの重要性は以前から指摘されているが、実際は多職種間で十分な連携を図れていないことが指摘されている1)-2)。そのためチームアプローチをすすめるには、情報伝達システムの強化、職員全体への教育、啓発が重要とされている3)。職員教育や啓発の手段の1つに勉強会開催が挙げられる。我々は摂食・嚥下障害患者に対しチームアプローチを行ううえで、摂食・嚥下に関する啓発活動は言語聴覚士の重要な役割の1つであると考え、摂食・嚥下障害に対する病院職員の知識・技術の向上、職種間連携の強化を目的に約3年間、摂食・嚥下勉強会(勉強会)を行った。その開催経過から、チームアプローチを進めるうえで工夫すべき点を勉強会開催の観点から検討した。

【対象】
医療系スタッフや事務職員など病院内の全スタッフを対象とした。

【方法】
1.勉強会の開催方法
経過のなかで開催方法を変更したため1期目と2期目し、それぞれの開催方法を表1に示す。

2.勉強会開催結果の集計方法
延べ36回行い、各回のテーマをカテゴリー別に分け、それぞれの合計参加者数、平均参加者数を求めた。また、時間帯を変更したことによる参加者数の変化も求めた。

表1:勉強会開催方法

【結果】
勉強会に参加した職種(表2)と参加者数(表3)は以下の通りである。示した職種全てが毎回勉強会に参加したわけではなかった。また、参加人数は1、2回目以外は全体を通して少なかった。しかし、少人数であったことから参加者との意見交換や質問は活発に行われた。また、参加者の中には参加回数の多い者もおり、摂食・嚥下障害に対して、興味・関心の強い者がいることをうかがわせた。
時間帯の変更による参加者数の変化はみられなかった(表4)

表2:勉強会参加職種 表3:テーマカテゴリー毎の参加者数
表4:勉強会開催時間帯ごとの参加者数

【考察】
勉強会には複数の職種が参加しており、各職種が関心のあるテーマに参加したことがうかがえる。しかし、テーマ毎の参加職種を把握できておらず、職種ごとの関心領域は把握できなかった。そのため、今後はチームアプローチを進める上で重要な情報となるであろう職種ごとの参加状況を把握することも重要である。また、割合は少なかったが、全体を通して参加率の高い職員がいた。そのような職員は摂食・嚥下領域に関心が強いと考えられ、チームアプローチを進めるためのコアメンバーになり得ると思われる。

1、2回目の勉強会のテーマである摂食・嚥下の生理については参加者数が多かったが、その後は参加者数が伸び悩んだ。そこで、15回目以降は勉強会の開催時間を変更したが、参加人数は大きく変化しなかった。そのため、勉強会の開催時間は参加者数に影響しないと思われた。参加者数は毎回少なかったが、回を重ねるごとに摂食・嚥下障害患者に対する具体的対応の問合せや症例の紹介が増えた印象があり、徐々に病棟スタッフの摂食・嚥下障害に対する認識が高まっていったと思われる。

今回は自由参加の勉強会のため、摂食・嚥下領域に関心の強いスタッフを見出すことができた。しかし、チームアプローチを進めるうえで、職員間の温度差は障壁となるため4)、それを解消するには施設の年間計画に摂食・嚥下領域の勉強会を積極的に組み込み、全職員に勉強会への参加を促すことが重要である。さらに、継続することでスタッフの認識は高まったが、勉強会にとどまらず全職員が容易に必要な情報にアクセスできるシステム作りも重要となるであろう5)

●文献
1) 宮本恵美、大塚裕一、久保高明ほか:摂食・嚥下リハビリテーションチームアプローチの現状について-熊本県内の言語聴覚士が所属する病院・施設を中心に-.保健科学研究誌、10、43-50、2013.
2) 秋本かおり、吉村紀代:食事摂取へのかかわりについてのチームアプローチの実態調査-看護師と言語聴覚士の関係性に着目して-.埼玉県包括的リハビリテーション研究会雑誌、13(1)、6-9、2013.
3) 天形一騎、小林文香、松本恵子ほか:NSTにおける摂食嚥下サポートチームの活動形態を考える.三菱京都病院医学総合雑誌、16、10-12、2009.
4) 清水陽平:チーム医療 カンファレンス・勉強会の開催.Nutrition Care、5(3)、46-47、2012.
5) 花木奈央、福田徹、稲田眞治ほか:脳死下臓器提供に関する職種間格差と院内勉強会の効果.日臨救医誌、16、1-6、2013.

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