著者:城内 貴志 氏(写真)1),本村 致明 氏2)
1)医療法人 晋真会 ベリタス病院
2)医療法人 晋真会 ベリタス訪問看護ステーション
Keywords: 訪問リハビリテーション,軽度要介護者,重度化予防
我が国では2025年には高齢化率が30%を突破すると推定され、特に後期高齢者が増えることから中重度要介護者(要介護度3以上の要介護者)が増加し介護給付費が大幅に増大することが予測される。このような背景を踏まえると今後は高齢者の要介護化や軽度要介護者(要介護度1もしくは2の要介護者)の中重度化を予防することが社会的急務であると考えられる。よって今回、軽度要介護者に対して訪問リハビリテーション(以下 訪問リハ)を行うことにより介護度の中重度化、動作能力の低下を予防できるかどうかについて調査した。
【方法】
対象は、平成18年12月~平成23年12月までの5年間の当事業所の訪問リハ利用者227名のうち、訪問リハ開始時に軽度要介護状態であり、且つ本研究に対して同意を得られた利用者98名を対象とした。これらの対象者を①軽度要介護者全体(平均年齢79.5歳、平均訪問期間7.9ヶ月)と、②軽度要介護者のうち訪問リハ利用期間が1年以上の長期利用者14名(平均年齢81.1歳、平均訪問期間22.4ヶ月)に群分けし、訪問リハの効果について調査した。全体のデータとは別にあえて長期利用者のみのデータをピックアップした理由としては、長期利用者は訪問リハ開始時に既に維持期の状態であったり、進行性の疾患であった者が多く疾患の自然治癒があまり望めない状態の者が多かった。そのため訪問リハ効果がより明確に評価できるのではないかと考えたからである。評価項目は訪問リハ開始時と終了時(実施中の場合は現在の状態)の介護度の変化とFunctional Independence Measure(以下FIM)の点数の変化を比較した。
結果は、①群の軽度要介護者全体においての訪問リハ開始時と終了時の介護度の変化は、維持が83.7%、中重度化が11.2%、要支援化が5.1%であった。FIMの評価点数の変化は、増加が41.8%、変化無しが36.7%、減少が21.4%。平均増加値が6.3点、平均減少値が-10.4点であった。(図1)②群の長期利用者においての介護度の変化は、維持が50.0%、中重度化が42.9%、要支援化が7.1%であった。FIMの評価点数の変化は、減少が50.0%、増加が28.6%、変化無しが21.4%。平均増加値が4.8点、平均減少値が-16.0点であった。(図2)
結果をまとめると、我々が介入した軽度要介護者の全体の約8割が介護度の中重度化、動作能力の低下を予防することができた。また、長期利用者のみをピックアップした場合でも約半数が介護度の中重度化、動作能力の低下を予防することができた。という結果であった。
上記の結果の要因としては、訪問リハ開始時の利用者の状態が退院後早期であった場合は、疾患自体の自然治癒に加えて我々が住環境整備の提案や生活上のアドバイスを行ったことにより利用者が在宅生活にスムーズに移行できたことがその要因ではないかと考える。また、訪問リハ開始時に既に維持期の状態であったり進行性の疾患であった者についても、レベル低下に合わせた住環境整備の再考を要所要所で継続して行ったこと、自宅での運動が習慣になるよう工夫して指導を行ったことなどがその要因ではないかと考える。加えて、ケアマネージャーの協力の下、他のサービス担当者と顔を合わす機会を積極的に作り情報交換を行ったこともその要因の一つであると考える。
目前に迫った超高齢化社会の到来にむけ、訪問リハの更なる普及と他のサービスとの密なる連携により、高齢者が住み慣れた地域で安心して在宅生活を続けることができる社会の構築に大きく貢献できるのではないかと考える。
●参考文献
1)川崎 慎介,久保 俊介:ここまで分かった2012介護保険制度改正.日経ヘルスケア12月号:24~40,2011
2)吉良 伸一郎、庄子 育子、江本 哲朗:2025年モデルへのロードマップ.日経ヘルスケア1月号:22~43,2012