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自立支援的介護とリハ専門職の協業的アプローチ

著者:永田 誠一 氏(写真)1),久保 与広 氏1),深町 勝彦 氏1),平田 邦壽 氏1) 
1)介護老人保健施設舞風台

PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.3 A2(Mar. 01,2013)

Keywords: 自立支援的介護,協業,日常生活活動

【はじめに】
近年,介護分野においては,環境調整や介護技術の工夫により利用者の残存能力を最大限に発揮させる自立支援的介護が注目されつつある.しかし,これらの実践には,運動学,生理学,人間工学などの幅広い視点が必要なため,職種を超えた知識,技術の共有化がテーマである.作業療法士(以下OT)や理学療法士(以下PT)による個別アプローチと,介護職による24時間の生活サイクルにおける自立支援的介護が理想的に協業することで,たとえ維持期であっても日常生活活動(以下ADL)の改善が期待できる.そこで,今回我々は,入所利用者10名を対象に,OT,PTと自立支援的介護による協業的アプローチを行い,その結果,機能的自立度評価(以下FIM)に改善を認めることができたのでここに報告する.

【対象】
A老人保健施設入所中利用者10名で,男性2名,女性8名.年齢は平均83.2±7.9歳.要介護度は,要介護2が1名,要介護3が3名,要介護4が5名,要介護5が1名だった.改定長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)は,平均15.0±6.9点だった. 対象者の選択においては,個人情報の保護に十分配慮を行い,研究の主旨に同意が得られたケースのみを対象とした.

【方法】
自立支援的介護とOT,PTによる協業的アプローチを3ヶ月間実施し,その前後において FIMを評価して比較検討を行った.自立支援的介護の実際は,太田ら1)を参考にして,環境調整と介護技術の統一化を行った.特に,環境調整は,A 下腿長に合わせた椅子の導入 B 椅子の高さ+20cm程度のテーブルの導入 C トイレにおけるFUNレストテーブルの設置などを行った(図1).OT,PTは,通常の直接的個別アプローチに加えて,間接的援助として介護職支援を行った.支援の内容は,規定のカンファレンスやネットカルテによる情報共有に加えて,実際の介護場面での共同検討会を定期的に行った.また,評価会議や勉強会を通じて,介護方法の背景にある基礎医学的知識の理解を促し,ADLや認知症周辺症状に関する評価法などへの学習の機会を設けた(図2).

図1:環境調整
図2:間接的援助として介護職支援

【結果】
3ヵ月間の前後において,FIM合計は開始時が79.1±23.1だったことに対して,3ヵ月後は84.4±20.2となり有意な改善を示した(p<0.05).FIM運動項目合計も,開始時が56.2±17.5だったことに対して,3ヵ月後は61.4±15.3となり有意な改善を示した(p<0.05)(図3).項目ごとでは,食事が5.6±1.9から6.3±0.8(p<0.01),更衣上半身が4.0±1.8から4.9±2.0(p<0.05),トイレ移乗が5.0±1.7から5.7±1.1(p<0.05),移動が3.8±2.1から4.3±2.1(p<0.05)など,それぞれ有意な改善を認めた(図4).その他,多くの項目において向上が見られた.また,数名においては,HDS-Rや認知症周辺症状においても改善が見られた.

図3:FIM合計 運動項目合計の変化
図4:食事 更衣(上) 移動 移乗(トイレ)の変化

【考察】
効果的なリハビリテーションサービスの提供においては,多職種間連携が不可欠であり,特に介護職との協業は大きなポイントである.自立支援的介護は,生活リハモデルとして注目されつつあるが,病院と比較してOT,PTの治療単位数に限りがある老人保健施設においては,日々の生活介護が単なるお世話ではなく自立支援的であることの意義は大きい.環境,技術を見直し,協業により多職種の強みを生かすことが,施設運営全体にも大きな影響を及ぼすものと考える.

●参考文献
1)太田仁史 他:新しい介護.155-220,講談社.(2003).

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