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呼吸器疾患患者の摂食嚥下レベルの予後を予測する

著者:平賀 仁実 氏(写真) 

PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.1 A3 (Jan. 18,2013)

Keywords: 呼吸器疾患,摂食,嚥下

【目的】
慢性閉塞性肺疾患など、呼吸器疾患の重症化による摂食嚥下障害が低栄養や誤嚥性肺炎を引き起こし、日常生活動作(以下ADL)や生活の質(以下QOL)をより低下させてしまうことがしばしばある。早期に経口摂取から代替栄養に切り替え、栄養状態を回復させることも必要であるが、栄養手段の切り替えを検討する際に悩む事も多い。今回、栄養手段の切り替えを検討する一つの指標として、ST介入初期における「退院時の摂食嚥下レベルの予測」や「経口摂取が確立するか否かの予測」について調査・検討を行った。

【対象】
2007年4月から2011年3月 まで、当院呼吸器科から処方された患者80名のうち、外科的治療を行った患者を除き、且つ①年齢②性別③入院からST開始までの日数④初期Bathel Index(以下BI)⑤身長⑥体重⑦入院時BMI⑧入院時総蛋白量⑨初期アルブミン値⑩RSST⑪MWST⑫初期摂食嚥下レベル⑬退院時BI⑭最終総蛋白量⑮最終アルブミン値⑯入院期間⑰退院時摂食嚥下レベルの計17項目のデータが取得できた患者37名を対象とした。37名の内訳は、男性31名・女性6名で、入院時の診断名は、肺炎25名・呼吸不全3名・肺気腫2名・その他7名であった。また、転帰先は、回復期7名、生活期9名、自宅退院8名、死亡13名であった。

【方法】
研究Ⅰ:目的は、退院時摂食嚥下レベルと相関関係にある項目をみつけ、退院時摂食嚥下レベルを予測する回帰式を求めることであり、方法は、⑰退院時摂食嚥下レベルと①~⑯項目をPearson/Spearmanで相関関係を分析(α=0.05)し、相関があった項目の中からリハ介入初期に得られる項目を用い、さらに重回帰分析を行う。
研究Ⅱ:目的は、経口摂取確立群(摂食嚥下レベル7以上)と非確立群(6以下)の間で①~⑫項目でMann-Whitney/T検定を行い、有意差のあった項目について、ROC曲線を作成し、そのカットオフ値を求めた。(α=0.05)。

【結果】
退院時摂食嚥下レベルと相関がある項目は、「ST開始までの日数(r=-0.363)」「身長(r=-0.458)」「初期アルブミン値(r=0.341)」「退院時BI(r=0.876)」「最終アルブミン値(r=0.806)」であった(表1)。そのうち、入院初期に得られる項目のみを使用した退院時摂食嚥下レベルを予測する重回帰式は、Y = 22.2099 -(14.521×身長)+(2.028×初期アルブミン値)-(0.02403×ST開始までの日数)であった(R=0.576、R2=0.335)。次に、経口摂取確立群と非確立群で有意差のあった項目は、「初期アルブミン値」(表2)で、カットオフ値は3.4g/dLであった(図1)

表1:退院時摂食嚥下レベルと相関のある項目 表2:経口摂取確立群と非確立群で有意差のある項目
図1:初期アルブミン値より経口摂取の可否を検討したROC曲線

【結語】
ST介入時に、ST開始までの日数、初期アルブミン値、身長に注目し、退院時摂食嚥下レベルを算出し、経口摂取確立が困難と予測される患者には、早期から代替栄養の検討を行うことで栄養状態の回復とADLの低下を予防できる可能性が示唆された。

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