著者:若松 剛 氏(写真)1),野間 博光 氏2),山本 昌和 氏2),三浦 泰子 氏2),酒井 英顕 氏3),井上 拓人 氏3),山本 祥平 氏3),高橋 勇志 氏4),徳地 亮 氏5),藤井 聖子 氏6)
1)倉敷リバーサイド病院 リハビリテーション室
2)岡山旭東病院 リハビリテーション課
3)岡山リハビリテーション病院 リハビリテーション部
4)ボディケアステージ ろ.は.す
5)岡山医療技術専門学校作業療法学科
6)井原市立井原市民病院リハビリテーション科
Keywords: 岡山県作業療法士会,自動車運転,連携
【はじめに】
一般社団法人岡山県作業療法士会(以下県士会)では、第44回日本作業療法学会でのワークショップ「自動車運転再開に向けて作業療法(以下OT)の視点から何が出来るか考えよう」の報告を契機に、2010年7月より「障がい者の自動車運転支援に関する現状把握と連携に向けた取り組み」(図1)を一事業としました。そこで、県内で意欲的に取り組む病院をモデルに、「障がい者の自動車運転支援における県内統一した専門機関連携システムの構築に向けた計画」が県士会事業部で始まったので報告します。
【活動目的】
自動車運転に関連する各専門機関では、障がい者のNeedsに応じて役割を担っているが、医療機関でのOTの臨床場面で障害を有した対象者が運転への影響が懸念されていても、「高次脳機能障害など、実車における疾病や障害の運転への影響がわからない」「当事者・家族のNeedsに応じた対応方法がわからない」「法律的な役割はあるが各機関間での十分な連携システムがなく対応に差がある」など現場で苦慮している場面を経験します。そこで、県士会事業部では自動車運転における専門機関との連携を通して、どこでも誰でも同一のサービスを受け、障がい者の自動車運転再開・中止の判断にOTも専門職の一員としての役割を担い、障がい者の自動車運転支援における県内統一した専門機関連携システムの構築を具体化することを目的に事業を進めることとしました。
【活動内容】
活動一覧と目的・対象・結果を図に示します。
『県士会員向けアンケート』(図2)では、結果より8割程度の県士会員は「自動車運転支援に関する必要性を感じている」が、「積極的に携われたと感じている」ものは2割程度に留まっていました。『第1回代表者間意見交換会』(図3)では、意見として「ごく一部の病院でしか連携が行われていない」「運転免許センターと指定自動車教習所での双方の連携は十分とは言えない」が現状でした。『県内指定自動車教習所に向けたアンケート』(図4)では、「障害の様子が詳細に分からないことにより対応に難渋する」の意見が多く見られ、各専門機関における情報交換の連携の必要性を求める意見が多く見られた。『第1回自動車運転支援研修会』(図5)では、参加した全ての職種が「連携が必要」と回答。研修会で得られた事として、「高次脳機能障害の運転への影響について理解出来た」「運転可否について同じ様に悩んでいる現状がわかった」「連携の実状を知る事が出来た」などが挙がった。
【まとめ】
専門機関間では情報共有の必要性は感じているが一部の医療機関の対応でしか実施されてなく、数少ない連携となっている現状が分かった。どの専門機関でも、障がい者の運転に関わる理解を深め、『連携手順のマニュアル作成』『評価シートの統一』など病院のモデルから県のモデルへの連携システムの構築が必要であると感じられた。
【今後の活動予定】
2012年11月に「第2回自動車運転支援研修会」、2013年 1月に岡山県作業療法士会推進活動公開講座「みんなで支えよう、認知症高齢者の自動車運転~より安全で住みやすい社会を築くために~」を開催予定。
【おわりに】
今後は医療機関において、医師を筆頭に理学療法士や言語聴覚士、医療ソーシャルワーカ一、介護支援専門員など更なる関連職種との連携を進め、当事者や家族の意見も取り入れ、県内統一した専門機関間連携システム構築に向けて取り組みたい。更に、自動車運転が難しいと判断された当事者でも運転免許証自主返納制度や介護保険制度の活用などマネージメントを行い、住みやすい社会を築く活動へ発展させていけるよう努めたいと考える。