トップ > ジャーナルハイライト > がん患者における、倦怠感が身体活動に及ぼす影響と、リハビリテーションによる影響
ジャーナルハイライト Article PT

がん患者における、倦怠感が身体活動に及ぼす影響と、リハビリテーションによる影響

― がん患者の倦怠感と活動性の関係について ―

著者:藤岡 真紀 氏(写真)(PT),渡辺 学 氏(MD) 
大阪府立急性期・総合医療センター

PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.1 No.4 A2 (Oct. 12,2012)

Keywords: がん患者,倦怠感,活動性

【背景】
「がん」のリハビリテーションにおいて、その活動性に大きな影響を及ぼす因子として、倦怠感があげられる。がん患者の日常生活での活動量は、診断を受て以降の治療の過程で診断前の20%以下に低下する、との報告がある。さらに、がん患者は、「がん」治療やその合併症で出現する、疼痛・嘔気・貧血・倦怠感・精神的要因・感染などによりさらに活動量が低下し、心肺機能や筋骨格機能の低下が生じ、廃用症候群をきたす。倦怠感への対応としては、直感的に感じる"しんどい"への対策は休息であるが、適切な運動により軽快しQOLも改善するとの報告が、約10年前から欧米で多く見られる。

【目的】
本研究では、がん患者の倦怠感(Cancer-Related Fatigue以下CRFと略すと日常生活動作における活動性を経時的に評価し、倦怠感が身体活動に及ぼす影響と、リハによる影響について考察したので報告する。

【対象】
2011年6月13日 ~2011年10月31日にがん治療中の廃用症候群の診断でリハを開始した116例中、2週以上経過観察が可能であった60症例を研究の対象とした。
対象の内訳は、年齢72歳±6歳、男性29例・女性31例、在院日数は38日±83日、リハ開始時BIは50±42点で、疾患臓器内訳は、肺9例・肝臓6例・膵臓6例・食道/胃/十二指腸6例・大腸/直腸6例・咽頭/舌6例・卵巣4例・脳4例・膀胱2例・前立腺2例・子宮2例・乳房2例・骨転移5例・その他3例(重複あり)
であった。

【方法】
(評価方法)
アメリカのテキサスのAnderson cancer centerの評価表を元に、2009年(BFI:Japanese)日本語規格の簡易倦怠感調査票を用いた10項目の患者の主観的な倦怠感調査とBarthel Index(以下BIと略す)を用いた患者の日常生活における活動性を、それぞれ、リハビリ開始時と、2週毎継時的に評価した。
(治療方法)
がん患者へのリハでは、廃用症候群およびADL機能低下に対して、理学療法を施行した。その際、基本動作やADL動作を用いたエネルギー消費を抑えた治療を実施し活動性の維持・向上を図りQOLの改善を目指しました。

【結果】
リハ開始時の倦怠感の有無と、2週間後のCRFとBIの増減を図1に示す。

図1:リハビリ開始時の倦怠感の有無と2週間後の倦怠感と活動性(n=60)

60例中、CRFが改善した症例は19 例、CRFなし22例、CRF不変が5例、CRF増悪 が14 であった。また、BIが改善した症例は35例、変化なしが14例、低下した症例は11例であった(図2に示す)。この中でBIが改善した症例の特徴をみると、リハ開始時からCRFが逓減した者が19/30例で、内12症例のBIが改善し、リハ開始時よりCRFが一貫してなかった者が22/30例で、内13症例のBIが改善した。次に改善したBIの変化をみると、リハ開始BIは50±42点⇒2週後のBI66±32点で、CRFが逓減した群(12症例)では、BIが30±39点から63±29点に改善し、CRFが出現しなかった群(13症例)では、BIが40±32点から75±53点に改善した。改善したBIの項目は、主に移乗・歩行、トイレや整容であった。
一方、BIの低下した11症例については、73±14点から47±14点への低下で、BIが低下した原因は、全身状態悪化症例(身体障害・精神症状の合併)と途中手術施行例の周術期の一過性の機能低下によるものであった(図3に示す)。
これらの結果より、廃用症候群のがんリハでは、倦怠感が増悪しない者が多く、また活動性は向上が得られる結果となった。

図2:活動性が改善した群(リハビリ開始時の倦怠感の有無別)
図3:活動性が低下した群

【考察・まとめ】
廃用症候群に陥ったがん患者のリハでは、基本動作やADL動作を用いたエネルギー消費を抑えた治療を実施し活動性の維持・向上を目指し、がん患者のリハの効果判定の一助として倦怠感と活動性の関係を考察した。
今回の研究結果から、がん患者はリハにより、倦怠感が逓減する傾向が伺えた。
さらに、全身状態増悪症例以外は、活動性が維持ないしは向上し、特に移乗、歩行、トイレなどのADLが向上することが明らかとなりQOLの改善が図れたといえる。
このことより、がん患者の活動性の改善には倦怠感が作用し、倦怠感と活動性には相互に関連性があることがわかった。先行研究の、倦怠感は適切な運動により軽快しQOLも改善するかどうかは、今回の研究からは明らかにならなかったが、我々はリハ後に倦怠感が軽減したとの患者の主観的評価を得ていることより、今後検証を重ねる必要性を感じる。

next>>
<<back
ガイアリハビリ訪問看護ステーション募集中!
ガイアリハビリ訪問看護ステーション関西説明会、面接会のご案内!
論文投稿受付中!! 取材や掲載記事投稿を募集しています。 求人掲載募集中! セミナー情報掲載募集中