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中医協調査で、がん患者リハビリテーションの状況が明らかに【その1】
著者:牧 潤二 氏

厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協、会長=森田朗・学習院大学法学部教授)の診療報酬改定結果検証部会(部会長=牛丸聡・早稲田大学政治経済学術院教授)は平成24年6月27日、第34回部会を開き、平成22年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査(平成23年度調査)の報告書をまとめた(写真)。それらの調査結果の速報はすでに平成23年秋に中医協・総会において報告され、平成24年度診療報酬改定においても生かされているが、同部会として今回、その詳細を報告書としてまとめ、コメントなども加えた。また、引き続き開催された中医協・総会で、同部会としてその報告を行い、了承された。平成22年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査では、さまざまな項目について調査が行われているが、平成22年度診療報酬改定で新設されたがん患者リハビリテーションについても調査し、それに対するリハビリテーション専門職の関与の実態が明らかになったのが、一つの大きな成果といえよう。今回は、がん患者リハビリテーションにおけるPT、OT、STのかかわりという観点から、同報告のポイントについて紹介しよう。

●がん患者リハビリテーション料の概要

平成22年度診療報酬改定で、がん患者リハビリテーション料(200点、1単位につき)が新設された。それについて平成24年度は特に改定はなく、同22年度改定での仕組みが続いている。
がん患者リハビリテーション料の対象となるのは入院中の患者(手術前・手術後、治療中など)に限られるが、がんの種類としては、例えば食道がん、肺がん、縦隔腫瘍、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵臓がん、大腸がん、舌がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、乳がん、骨軟部腫瘍、がんの骨転移、原発性脳腫瘍、転移性脳腫瘍など、主要なものはすべて対象になる。また、在宅において緩和ケア主体で治療を行っている患者であっても、一時的に入院をしていて在宅復帰を目的としたリハビリテーションが必要な場合は、その対象となる。
それらの患者に対して、医師の指導監督の下、がん患者リハビリテーションに関する適切な研修を修了した理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が個別に20分以上のリハビリテーションを行った場合を1単位(200点)として、1日に6単位に限り算定できる。また、それらのリハビリテーション専門職でななく、専任の医師が実施した場合も、同様に算定することができる。ちなみに、ここでいう「適切な研修」とは、厚生労働省委託事業の「がんのリハビリテーション研修」、その他関係団体が主催するもので、研修期間は通算して14時間程度であることなど、厚生労働省の通知による規定がある。
また、がん患者リハビリテーションを行う際には、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士など多職種が共同して、リハビリテーション計画を作成しなければならない。それにより、リハビリテーション総合計画評価料(300点)を算定していることも要件となる。その他、「がんのリハビリテーションに従事する者は、積極的にキャンサーボードに参加することが望ましい」とされている。ちなみに、厚生労働省では、キャンサーボードについて「手術、放射線療法、化学療法に携わる専門的な知識および技能を有する医師、その他の専門医師、医療スタッフなどが参集し、がん患者の症状・状態、治療方針などについて、意見交換・共有・検討・確認などを行うためのカンファレンス」といった趣旨の定義をしている。

●血液腫瘍患者のリハビリが多い

中医協・診療報酬改定結果検証部会の報告書によると、がん患者リハビリテーション料の届出をしている病院(回答68)の開設者について、「公的医療機関」、「国」、「医療法人」、「社会保険関係団体」、「個人」、「その他」に分類すると、最も多いのは「公的医療機関」、「その他」で、それぞれ26.5%となっている。以下、「国」(22.1%)、「医療法人」(20.6%)と続く。
また、それらの病院の属性として、がん診療連携拠点病院の指定の有無を見ると、「都道府県がん診療連携拠点病院」が38.2%、「地域がん診療連携拠点病院」が17.6%で、「がん診療連携拠点病院の指定は受けていない」は38.2%となっている。つまり、がん患者リハビリテーション料の届出をしている病院の過半数は、がんの医療に専門的に取り組んでいる「拠点病院」クラスの施設である。
平成22年度において、がん患者リハビリテーション料を算定した患者(延べ数)で、がんの種類など属性を見ると、最も多いのは「血液腫瘍により当該入院中に化学療法または造血幹細胞移植を行った患者」で、全体の36.6%を占めている。以下、「原発性脳腫瘍または転移性脳腫瘍の患者で当該入院中に手術または放射線治療が施行された患者」(29.6%)、「食道がん、肺がん、縦隔腫瘍、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵臓がん、大腸がんと診断され、入院中に閉鎖循環式麻酔により手術が施行された患者」(14.9%)が主なものである。