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独立支援
「訪問リハ・ステーション」だけが起業ではない
著者:阪井 康友 氏
帝京平成大学 大学院 健康科学研究科 理学療法学専攻 健康メディカル学部理学療法学科

平成24年度の医療・介護保険のダブル改定で、期待されていた「訪問リハ・ステーション」は実現されませんでした。しかし、理学療法士、作業療法士そして言語聴覚士の知識と技術の地域への提供はまだ充足されていません。そのため、これらに関わる皆さんが、地域の人々のために貢献したいと思うのは当然の流れです。
ここで、訪問リハ・ステーション実現に向けたこれまでの流れを一度振り返ってみましょう。

2007年12月に、日本リハビリテーション病院・施設協会をはじめ、リハ医学会、PT、OT、ST協会の5団体で合意された「高齢者リハビリテーション医療のグランドデザイン」が発表されました。これは、2015年に向けたリハビリテーションのあり方を中心に検討され、診療所等が核となる在宅リハ・センター構想や、独立した訪問リハ・ステーションの創設、PT・OT・STによるリハ特化型短時間通所介護の整備の記載など、長期の展望に沿ったものとなっており、筆者はこの発表の実現に不安と期待を感じたことを思い出します。

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筆者は2008年5月に、独立型訪問リハビリテーション・ステーション構想と将来の地域リハビリテーション・ケアのあり方を再考するため、職場である帝京平成大学池袋キャンパスにて、有限責任中間法人 全国PT・OT・ST民間事業者連絡協議会(代表理事 藤原茂)主催による「地域総合リハケア・東京フォーラム2008」にて、「構想・訪問リハ・ステーションの役割」をテーマとして、指定訪問リハ・ステーション(茨城県)の提案者である大田仁史先生と、グランドデザイン構想に尽力された石川誠先生にご講演いただきました。加えてフォーラムの中でも、石川先生と日本理学療法士会会長 半田一登先生、日本作業療法士協会会長 杉原素子先生、日本言語聴覚士協会会長 深浦順一先生による、構想・訪問リハ・ステーションの役割と責務、そして創設に向けた対応などについて、様々な思いをお話しいただく機会を設けました。

同年10月、日本リハビリテーション病院・施設協会が東京都内で開いた「2008年度第1回リハビリテーション研修会」では、浜村明徳会長が「介護報酬改定の動向」をテーマに講演。介護保険制度での訪問リハ・ステーションの新設(2012年)などを訴えられました。その際、介護保険による訪問リハ、訪問看護7(PT等によるリハ)および医療保険によるリハの報酬上の整合性を図るため、20分1単位制とすることも提言されました。

その後、2009年4月に「日本理学療法士協会」・「日本作業療法士協会」・「日本言語聴覚士協会」 の3協会と、訪問リハビリに関わる 「全国訪問リハビリテーション研究会」・「全国在宅リハビリテーションを考える会」 の2団体が共同で、「訪問リハビリテーション振興会(伊藤隆夫代表)」が設立されました。会は2012年の訪問リハ・ステーションの制度化を目指して、「訪問リハビリテーション管理者研修」 をはじめ、「訪問リハビリの実態調査・研究」、「訪問リハ・ステーション制度化準備」の事業を推進してきました。
しかし、結局のところ、2012年には訪問リハ・ステーションは実現されなかったのです。

PT・OT・STの皆さんの多くは、「訪問リハ・ステーション制度化への関心」、言葉を変えれば、「開業・独立起業へのコンプレックス」でイッパイです(起業を成功させるためにはよい状態です)。起業して地域貢献したいと2012年の改定を心待ちにして人生計画をしていた方々にとっては、やり場のない思いを感じているかも知れません。

ここで、もう一度考えてみてください。皆さんは専門的な知識と技術を持っています。「訪問リハ・ステーション」だけが起業だけではありません。医療法人や社会福祉法人格でなくとも、訪問看護ステーションからの訪問リハ・サービス、リハ特化型のデイサービスを設立することはできます。特にリハ・サービスをメインにしなくても、通常のデイサービス等の介護保険事業の法人経営でも充分可能です。また、公的保険外の自費によるリハ・サービスや、取締役またはオーナー(投資を受けて)を置いて、事業運営を行うことも、またはフランチャイズや起業支援・コンサルテーションすることなど、社会貢献の方法は様々です。実はこれら全ては、既にPT・OT・STによって行われているのです。

これらの事業は、他の事業と比較すると社会事業性の高さ、経営の安定性などを理由に、異業種のからの参入希望者が非常に多いのが特徴です。インターネットで「リハビリ型デイサービス、起業」で検索すると、異業種からの新規事業を支援するコンサル、フランチャイズ、ハウツーの講習会・DVDがいかに多いかご理解頂けると思います。実は、筆者への異業種からの問い合わせも非常に多いのです。

筆者は大学教員である一方、介護保険に限らず、小児や難病のリハも対応する訪問看護ステーション(4ヵ所)、PT・OTによるリハ特化型短時間デイサービス(6ヵ所)、居宅介護支援事業、小規模フィットネス事業(FC)などを運営する法人(現在、PT・OT・STなど115人のスタッフ、9期)の取締役会長を務めています。

このサイトでは、私の経験を踏まえて、PT・OT・STを取り巻く様々な情報をお伝えできればと思っています。