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コーチングシリーズ
「12人までの部下を持つ人のためのコミュニケーション講座」 その1
著者:中川 昌子 氏
作業療法士歴31年。
現在総合病院リハビリテーション科の副技師長として勤務。

今回の内容は「リーダーシップとコミュニケーション」です。セミナーを開催した中から以下にシェアさせていただきます。

今回のセミナーは、予想以上にエネルギーのいることでしたが、何とかやり遂げることが出来たこと、それから参加者の方たちが「コーチング」に興味を持ってくださったことがアンケートから伝わってきましたので、手前味噌ですが「やっぱり、やってよかった」と思っています。
セミナーに、参加して下さった方もそうですが、参加できなかった方もこのタイトルに興味を持たれたようですので、少し説明をさせていただきますと。

「12人まで・・・」にしたのは

  1. [1]「スパン・オブ・コントロール」(統制の幅)を意識しました。これは、人が一人で管理できる人数のこと。チームの適正サイズは、その特性やリーダーの資質によって5人~20までと言われていますが、経験上私は「12人まで」を目安にしています。もし100人規模の組織なら、トップリーダーが一人で部下全員を管理することは、現実的ではありません。理想は、トップが10人のサブリーダーを育て、そのサブが各々10人ずつ部下の面倒を見る、というシステムを作ることです。
  2. [2]リハビリテーションの分野では、最近大規模な組織が増えています。とはいえ、今でも中小規模の組織でリーダーをしている人が少なくありません。また、大規模の組織であっても、先にも書きましたように、主任・係長クラスのリーダーが現場で抱えられる部下の人数は、10人くらいではないか、と予想しています。適正人数については意見が分かれるところですが、現場で臨床を行いながら、同時に「部下の能力開発」を行っていくには、このくらいが現実的です。そういうリーダーをイメージしました。
  3. [3]30代~40代(前半)のリーダーに、コーチングへの興味を持ってもらいたいと思いました。理由は、このような学びの機会を通して、以下に挙げるような現場の声をシェア(共有)し、解決の糸口をつかんでもらいたかったからです。「12人までの・・・」と書けば、そういう人達が関心を持ってくれるかもしれない、と密かに期待していました。

実際にある現場リーダーの声

  • 自分はリーダーのタイプではない
  • 人をリードしていく自信がない
  • 上層部と現場の間にいて、自分の立ち位置が分からない
  • セルフマネージメントができない
  • 相談する相手がいない
  • このやり方でいいのだろうか
  • 異常に疲れる
  • 部下に要件をどうやって伝えたらいいか、分からない
  • 部下に神経を使う
  • コミュニケーションを取ろうとすると緊張する
  • 部下に話をしても、反発・無視される
  • リーダーとして指示をしても、実行されない
  • 明日のことを考えると眠れない

リーダーは、いつも元気でみんなをぐいぐい引っ張っていくもの、というイメージがありますが、一口に「リーダー」と言っても、色々なタイプがありますし、生身のリーダーはそれほどタフな人ばかりではないのです。それに、年齢の近い上司と部下との間では、力関係がアンバランスなこともあります。場合によっては、部下の方が高いスキルを持っていたりしますから、そういう中でのリーダーは結構大変なのです。

普段は元気なリーダーでも、上に書いたことが一つも当てはまらない人は、ほとんどいないでしょう。ストレスがたまりすぎたときは、セルフコントロールがきかなくなり、すっかり調子を崩すこともあります。例えば、協調性があってサポーティブなリーダーほど、バーンアウトを起こしやすい。そうならないためにはどうしたらいいのか。これはチーム全体に影響を及ぼす大きなテーマです。

「コミュニケーション講座」にしたのは

  1. [1]職場でアンケート調査をしました。結果は、予想以上にコミュニケーションスキルの必要性を感じている人が多く、その一方、でこれまでにほとんど学習の経験がなく、もし近くで学べる機会があったら学びたい、という希望を持っている人が多いからでした。
  2. [2]先日、勤務先の本部による医療技術者・新人研修に向けて、事前調査が行われました。その結果を見せてもらったところ、「今どんなことが課題ですか」という問いに対して、「コミュニケーション」を挙げたレポートが最も多く、就職してわずか半年足らずで、多くの人がコミュニケーションに悩んでいることがわかりました。コミュニケーションの対象は、上司・他職種・患者です。新人の人たちにとって、「コミュニケーション」がこれほどのキーワードになっていることを知って、自分の認識がまだ甘かったことに気付きました。
    そのような経過もあって、いっそうリーダーには、コミュニケーションスキル・コーチングスキルが必要だと思うようになりました。そして、「微力でも、できるところから講座を開くことには意味がある」と思えるようになりました。

参加者よりいただいたフィードバックから、私がお話した事例によく似た現場が、ほかにもあることがわかりました。身近なところに相談できる人がいればいいのですが、「こんな初歩的なこと、恥ずかしくて誰にも聞けない」と思っている人が意外と多いのです。

参加者の皆さんは、まさしく私がイメージしていた通りのリーダーでした。どのようにスタッフの話を聞いて(聴いて)、アドバイスしてあげたらいいのか。どんなふうに他職種とコミュニケーションをとったらいいのか。上司と部下の対立をどんなふうに調整したらいいのか、リーダーとしての自分のあり方はこれでいいのだろうか。皆さんは現場で懸命に対応しながら、「何かいい方法がないのだろうか」と試行錯誤していました。私は、こういうリーダーの受け皿が必要だと、ずっと思っています。それは、リーダー個人のためでもありますが、リーダーの在り方によってチーム全体のパフォーマンスや雰囲気が大きく左右され、その影響が患者さんにダイレクトに伝わるからです。

次回は、「コーチング(GROWモデルとコーチングスキル)」について紹介する予定です。

中川 昌子

作業療法士歴31年。担当患者数延べ7万5千人。
リハビリテーションセンター・大学病院・精神病院・他で経験を積み、産業カウンセラー、生涯学習開発財団認定コーチ、日本コーチ協会認定メディカルコーチの資格を取得。現在総合病院リハビリテーション科の副技師長として勤務。

精神医学や深層心理学をベースにしたコーチングを得意とし、医療従事者のキャリアパスからバーンアウトまでを扱う。クライアントからは「コーチングで、物事のとらえ方や考え方の選択肢が増えました」「職場や後輩を育てるために、またお願いします」「もう、一人で悩む必要はないという気持ちになれました」等の声が届く。慣れない管理業務や後輩指導に悩む30代~40代から支持を得ている。