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ジャーナルハイライト
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Article
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.3 No.5 A1(May. 02,2014)

競技別にみた腰椎分離症症例の身体特性

著者:上池 浩一 氏(写真)(RPT)1),森 孝久 氏(MD,Ph.D.)2)
1)整形外科つばさクリニック リハビリテーション科
2)整形外科つばさクリニック
key words:腰椎分離症,競技種目,身体特性

【はじめに】
腰椎分離症(以下分離症)は成長期のスポーツ選手に好発する疾患であり、腰椎関節突起間部(以下pars)の疲労骨折と考えられており1,2)、MRIやCTによる早期診断3)と治療開始が重要である6)
治療は体幹装具による腰椎にかかるストレスの軽減や運動療法における股関節、体幹機能の改善が中心となるが、スポーツでは種目により求められる動きが異なり、腰椎にかかるストレスに違いが生じると考える。
しかし各競技における分離症症例の身体特性について報告されたものは少ない。そこでオーバーハンド競技である野球とバレーボールにおいて股関節可動域制限や、動作パターンが分離症発生にどう影響しているか検討した。

【方法】
対象は当院を受診しCT検査の結果分離症の確定診断し、最終的にスポーツ復帰可能であった81名(男性68名、女性13名、平均年齢17.1±2.5歳、平均身長166.4±8.3cm、平均体重61.2±9.7kg)である。種目の内訳は、野球群(以下B群)は56名、バレーボール群(以下V群)は25名、女性についてはすべてV群であった。分離症の病期は初期34例、進行期13例、終末期38例で、分離椎体は第5腰椎 73例、第4腰椎 8例であった。
また両側性は47例、片側性は34例であった。測定方法は全例について利き手、利き足の別について問診した。次に両側股関節可動域を全運動方向について測定し、さらにハムストリングスのtightness を検討するためにSLRも加えた。
測定肢位については日本整形外科学会参考可動域測定の方法に準じて測定し、全て他動運動にて行い、5°刻みで記載した。分析項目は1:競技間での股関節可動域の差、2:各群での片側性・両側性の割合、3:利き手・利き足と片側性分離症の関係である。統計処理はMann-Whitney のU検定を用い、有意水準は5%とした。

【結果】
B群では非利き手側股関節屈曲・内転・内旋において制限を認めたが(p<0.01、表1)、V群については股関節可動域に有意差を認めなかった(表2)
片側性の割合はB群では35.7%、V群では56.0%であった。利き手・利き足と片側性分離症の関係について、利き手・利き足の反対側に有意に片側性分離症を示していた。特にV群男子にその傾向が強く見られていた。

表1:B群における股関節可動域
表2:V群における股関節可動域

【考察】
B群では一側の股関節可動域制限を認め、投球動作に起因するmuscle tightnessが原因ではないかと推察する。B群では全例非利き手側股関節屈曲・内転・内旋が有意に制限されており、投球動作の繰り返しにより非利き手側股関節周囲筋の遠心的な収縮が誘因となり制限が生じたものと考えられる。
V群では明らかな股関節可動域の差を認めなかったが、低身長の男性で、アタッカーに片側分離症が多いことが特徴として挙げられる。板倉は低身長の選手のアタック動作は、より高い打点、コースの打ち分けのために過度の伸展や、利き手と反対側への側屈により腰痛が出現するとしている(図3)4)
X線上体幹の伸展・側屈位では、関節突起間部はわずかながら狭小化を認め、腰椎部にはKemp テストと同様のストレスが生じていると思われる。

図3:低打点時と高打点時の体幹伸展、側屈角の違い

バレーボールは空中での身体操作が多く、オーバーハンド競技の投球と比べても腰部への負荷は直接的になる。西良らは腰椎運動中に生じる応力値の結果から伸展・回旋が影響するとしているが5)、バレーボール選手にみられるように、過度の側屈もparsへのストレスを増大させる因子であると思われる。
分離症の理学療法を行う場合、各種目での動作パターンと疼痛出現動作を詳細に分析し、過剰な腰椎運動の制御がスポーツ復帰や予防の観点で肝要であると考える。

●引用文献
1)中島寛之編著 新版スポーツ外傷と障害 文光堂 1996
2)西良浩一他:発育期腰椎分離症 整形・災害外科55:53-64,2012
3)Fujii K,KatohS,Sairyo K, et al:Union of defects in the pars inetrarticularis of the spine in children and adolescents. J bone Joint Surg,86-B:225-231,2004
4)板倉尚子:バレーボール選手の腰痛対策 Sports medicine 131,19-23,2011
5)Sairyo K et al:Spondylolysis fracture angle in children and adolescents on CT indicates the facture producing force vector ;a biomechanical rationale.Internet J Spine Surg 1 (2),2005
6)宗田大編 復帰を目指すスポーツ整形外科 株式会社メジカルビュー社 2001