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ジャーナルハイライト
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PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.11 A3(Nov. 29,2013)

子育て支援サークル利用者の就学後に関するアンケート調査

著者:新井 紀子 氏(写真)1),寺尾 香苗 氏2),高橋 麻理 氏3),加藤 寿宏 氏4)
1)京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻博士後期課程
2)おはなくらぶ代表
3)聖ヨゼフ医療福祉センター
4)京都大学人間健康科学系専攻人間健康科学系専攻
key words:子育て支援サークル,アンケート調査

【はじめに】
近年、特別支援教育への取り組みとして、学校教育現場にOTが参画する機会は増えつつあり、現場の教師のニーズは学習面のみでなく感覚や行動も含まれていることが報告されてきているが、保護者が学校生活で気になることと捉えている内容に関してはほとんど報告されていない。また、発達障害児に対する早期介入の必要性も報告されているものの、障害が軽度の場合、医療機関にかからず一般の保育所・幼稚園、小学校に所属し、課題に直面して対応に苦慮している保護者も多い。
そこで、京都市内を活動拠点とする子育て支援サークル「おはなくらぶ」は2000年4月より、2歳半~小学3年生までの発達障害児(疑い、兄弟等含む)を対象として、保育士とOTにより感覚統合の理論を用いた親子参加型の活動を提供している。今回、当サークルに参加したことのある小学2年生以上の児の保護者に対し、学校生活に関するアンケート調査を行ったので報告する。

【対象】
過去に当サークルを利用したことのある、小学2年生以上の児の保護者52人を対象とした。対象者には文書にて説明と同意を得た。

【方法】
アンケートは無記名式で独自に作成し、協力依頼、回答の返却とも郵送にて行った。

【結果】
22名の保護者より回答が得られ、回収率は42.3%であった。回答対象となる児の学年は、小学2・3年が3名、小4~6年が11名、中学が8名であり、所属クラスは通常の学級16名(73%)、特別支援学級6名(27%)であった。特別支援学級の6名のうち3名は入学後に通常の学級から移籍していた。子どもの特徴は、複数回答で表1に示す。

表1:子どもの特徴の領域と項目(複数回答)

学習面と生活面において、過去または現在で気になることを整理し図1および図2に示す。
これらについて、何らかの対応をとったと回答したのは22名(100%)であり、その方法は「家庭での宿題や練習」22名(100%)、「担任や特別支援学級等の先生への相談や個別対応」5名(23%)であった。通常の学級での学習や生活に対する十分な配慮の有無については、有り7名(32%)、無し3名(14%)、担任次第5名(23%)、無回答8名(36%)であった。
保護者が相談できる相手の有無は、有り14名(64%)、無し4名(18%)、無回答4名(18%)であり、相談者は教員または医療関係者であった。家族の理解と協力の有無は、有り6名(27.3%)、無しまたはほぼ無し10名(45.0%)、無回答6名(27.3%)であり、「有り」の回答者は家族の支えの大きさを記載し、「無しまたはほぼ無し」の回答者は父親の育児不参加や祖父母の無理解を挙げた。

図1:教科学習で気になったこと、困難であったこと(複数回答)
図2:生活面で気になったこと、困難であったこと(複数回答)

【考察】
過去に当サークルに参加したことのある児の保護者は、児が就学後に学習面でのつまずきだけでなく、感覚または姿勢・運動、コミュニケーション、行動などに何らかの特徴を有していると答える割合が高く、またその対応は通常の学級で十分に配慮されているとは限らず、家庭での取り組みが大きいと感じていることが示された。
さらに、相談相手は無しと答えた保護者が少なくないこと、および家族の理解と協力が無しまたはほぼ無しと答えた保護者が多いことより、子育ての中心となっている保護者の更なる支援、および家族も含めた理解を早期から促すことの大切さが伺える。
発達領域で子どもの支援を行う際には、OT室での支援に留まらず、学校生活での支援、家庭生活での支援、またそれぞれの支援に関わる教師や保護者への支援は重要であり、子ども、教師、保護者のニーズや現状に対する高い意識をセラピスト自身が持つことは、臨床の充実において大切であると考える。