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ジャーナルハイライト
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PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.9 A1(Sep. 06,2013)

介護度の変化からみた短時間利用型通所リハの有用性

―全国調査と当通所リハとの比較―

著者:藤原 明日美 氏(写真),今田 健 氏
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
key words:介護度,短時間利用,通所リハ

【はじめに】
「1時間以上2時間未満」の通所リハビリテーション(以下、通所リハ)の2012年の提供数は、2009年の新設時より約3.3倍に増加しており、リハビリに特化した短時間通所リハは、今後さらに拡大すると予測されている1)。当通所リハは、2006年の開設時より専門職による短時間個別リハや自主練習の指導などリハビリを主体としたサービス提供を特徴としており、高齢化の進む地域において、その要望は多く、利用者数は増加傾向にある。

三菱総合研究所(以下、三菱総研)が、2012年に全国の通所リハに対して調査をした際、介護度の変化については、悪化傾向を示す事業所の割合が高く、また、平均介護度が重いほど介護度の改善は難しいと報告している2)。そこで、当通所リハの現状を調査し、三菱総研の調査との比較を分析した。

【対象および方法】
2009年10月以降に利用を開始した147例の内、2013年4月までに介護保険の更新があった107例を対象とし、介護度の変化を調査した。介護度の変化は、三菱総研の調査方法に基づき、利用開始時の要介護度から1段階改善を-1、維持を0、1段階悪化を+1として利用開始時の介護度別に平均値を算出した。

また、対象者の介護度別割合、年齢別割合、利用時間枠、平均介護度を集計し、三菱総研が2012年3月に調査した2)、利用時間が4時間未満の全国の通所リハとの比較を行った。

【結果】
当通所リハの介護度の変化は、要支援1、要支援2では悪化の傾向を示していたが、要介護1から要介護5においては維持、改善の傾向を示していた。また、全体では、-0.17と改善傾向を示していた(図1)。平均介護度は、当通所リハは1.53であった。介護度別割合では、当通所リハは要支援1、要支援2の合計が45.8%と全体の約半数を占めていた(図2)。年齢別割合では、当通所リハは65から74歳の割合が最も高く29.9%、次いで85歳以上、80~84歳の順となっていた(図3)。利用時間枠では、当通所リハは2時間以上3時間未満が63.6%と半数以上を占めていた(図4)

図1:当通所リハにおける介護度の変化

【考察】
三菱総研より全国の平均要介護度の変化と事業所の割合が報告されている2)。全国では介護の変化が0.00より悪化を示す事業所が多い中、当通所リハは-0.17と改善傾向を示した。平均介護度において、全国は1.86であるのに対し当通所リハ1.53と低い値を示していた。調査時の平均介護度が1.5から2.0の事業所は、平均介護度の変化が0.03であったと報告されており、当通所リハにおいては、-0.17であったことから短時間個別リハビリや集団体操、自主練習の指導などリハビリに特化したサービス提供が介護度の変化を改善傾向に示した要因となったと考えた。利用時間枠について、1時間以上2時間未満では全国が17.8%であるのに対し、当通所リハは24.5%と高い割合を示していた。当通所リハでは自己送迎で1時間以上2時間未満の利用者は、週2回の利用の内1回をリハビリ実施時間2単位としている。他の時間枠よりリハビリを集中的に行えることも介護度を改善傾向に示した一助となったと考えた。

しかし、リハビリの実施頻度だけではなく利用者の年齢や介護量など利用者の特性も介護度の変化に関与する報告も散見される。今後は、利用者の定期評価の結果から身体機能面の維持、改善が図れているか経過を追っていくことが重要であると考えた。

図2:介護度別割合
図3:年齢別割合
図4:当通所リハと全国の利用時間枠の割合

●引用文献
1)REPORT 病医院 報酬増で注目集まる短時間通所リハ―利用ニーズ高く新たな顧客層の開拓も―:日経ヘルスケア 2013(2):52-58
2)三菱総合研究所:介護サービスの質の評価に関する利用実態等を踏まえた介護報酬モデルに関する調査研究事業 報告書2012(3):要旨ⅵ,51,86-87
3)厚生労働省:第83回 社保審-介護給付費分科学会資料 2011(10):10