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ジャーナルハイライト
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Article
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.8 A1(Aug. 09,2013)

訪問リハビリテーションにおける介入目的と介入結果の傾向

著者:須田 祐斗 氏(写真)
公益財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院
key words:訪問リハビリテーション,介入目的,介入結果

【研究概要】
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)は必ずしも機能向上を目的とはしておらず、介入内容も多様である。介入結果に関し、目標達成率や介入期間は介入目的別に検討される必要があると考え、今回は介入目的別に結果の傾向を調査した。その結果、機能向上を目的とした場合は移乗、トイレ動作、排尿、移動能力に改善が見られたものの目標未達成率も高く、介入後早期の目標再検討が必要であることが示された。

【方法】
対象は2010年7月時点で訪問リハを利用中あるいはそれ以降に開始し、2012年3月までに終了した104名とした。内訳は男性48名女性56名、平均年齢76.1歳、脳血管40名、骨関節25名、内科疾患27名、難病・末期癌が12名であった。データベース及びカルテより情報を集め、主たる介入目的が機能向上であった群(向上群)、機能維持・廃用症候群進行予防であった群(廃用群)、環境調整・介助指導等が主目的であった群(環境群)、複数の目的が混在している群(混在群)に分けた。各目的におけるFIM運動項目(m-FIM)の変化、介入期間等を分析した。

【結果】
向上群23名(平均年齢71.5歳)、廃用群36名(78.5歳)、環境群30名(76.1歳)、混在群15名(77.7歳)であった。m-FIMの変化は向上群が4.9点と廃用群の-1.3点に比して高かった。項目ごとに見ると移乗、トイレ動作、排尿、移動の項目で差異が見られた(図1)。環境群は0.9点と介入前後で大きな変化は見られなかった。介入期間は廃用群が平均284.9日継続していたのに対し、環境群は123.3日と短かった(図2)。終了時の状況に関しては、向上群は目標未達成のまま終了した例が26.1%、廃用群は身体状況悪化で終了となった例が58.3%、環境群は目標を達成して終了した例が70.0%とそれぞれ他群に比して多かった(図3)

図1:向上・廃用群のm-FIM変化値
図2:各群の介入期間
図3:終了時の状況

【考察】
m-FIM変化は向上群が他群と比して高く目的に応じた介入効果を示せた。特に移乗や歩行などの移動能力に効果が出やすく、それに伴いトイレ動作の機会は増加、失禁の減少により排尿項目の改善にもつながったと考える。
一方で目標未達成率も高かった。これは開始時の目標設定において、他覚的評価のみならず本人・家族の意向を多く取り入れ、やや希望的な目標になったことが一因と考える。意向を聞きつつも合理的な目標を定めるためには、開始後早い段階で集団的討議の場を設け、目標の合理性の判断及び修正を図ることの意義は大きい。
m-FIMが低下していた廃用群に関しては、拘縮予防・離床機会確保目的での介入や進行性疾患への介入が多いため維持・低下例が多数であったと考える。さらに目的の性質上、在宅生活が続く限り継続が必要な場合が多いために介入期間も長くなり、身体状況の悪化で終了する傾向がある。維持あるいは低下を遅らせるという目標の達成度を客観的に評価することは困難だが、現実の利用者・家族からはそれなりの満足を得ていた。
また、明確な目的を掲げ長期介入を前提として介入を継続する例もありうる。しかしながら漫然とした長期介入は避けねばならず、他覚的かつ専門的評価をもとに集団的討議を繰り返して継続理由を吟味することは極めて重要である。環境群は介入期間が短く、目標達成率も高い傾向が見られた。環境群には環境調整、介助指導、自主トレ指導といった目的が含まれ、これらは到達すべき終着点が明確であり、訪問リハ介入によって比較的短期間で効果があげやすい。
また、病院からの退院後に在宅生活が安定して送れているかを確認するといった、モニタリング目的での介入例もあり、介入期間はさらに短くなったと考える。

【まとめ】
目的によって介入結果の傾向は異なり、各群で訪問リハ介入による一定の効果を示した。より意義のある介入とするため、向上群では介入開始後の早い段階で、廃用群では定期的かつ継続的に集団的討議を行うことが重要である。