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ジャーナルハイライト
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Article
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.7 A1(Jul. 05,2013)

鹿児島市における訪問リハ事業運営の実態

著者:東 弘子 氏(写真)1)
医療法人三州会 大勝病院
key words:訪問リハ,事業運営,鹿児島

【はじめに】
介護保険の中で訪問リハはサービス提供量が非常に少ないといわれるが,鹿児島県は[居宅サービス受給者中の訪問リハ受給者割合]が全国で13位となっている.今回,鹿児島県地域リハビリテーション広域支援センター事業の一環として,鹿児島市内にある訪問リハサービス提供事業所を有する病院・施設に対して,サービス提供数に影響するスタッフ・体制についてアンケート調査した.

【方法と対象】
鹿児島県サービス情報公表システムで,[鹿児島市][訪問リハ・介護予防訪問リハ]で検索し抽出された49病院・施設に対して,平成22年10月にアンケートを郵送配布し,23の病院・施設から有効回答得た(回答率47%).

【結果】
(1)リハ職員数:
今回の調査対象リハ職員総数は302人で,その中で訪問リハに従事する職員は3割に満たなかった(図1). 訪問リハ従事者のみの比はOTとSTの割合が少なくなり8割がPTであった.

図1:訪問リハ従事者の割合

次に,病院・施設毎に専業・兼業比(%)をとり,その比(%)の平均を求めた.23病院・施設全体では訪問リハ専業者に対し施設内リハとの兼業者が5倍以上の比であった.ここで10人以上リハ職員数を抱える大きな病院では病院専業者割合を増やす傾向があり,つまり職員数が多くても訪問リハに多く人員を割くわけではなかった.訪問専業者をかかえる病院は2つのみだった(図2).

図2:専業・兼業比の平均

(2)取得単位数:
訪問リハ従事者全ての1月訪問リハ実績では1病院100件以下の病院・施設が8割を占め(図3),23施設の平均は,92.4件/月であった.兼業者の約8割が訪問リハに充てていたのは1日の取得単位の25%足らずであった(図4).

図3:1月間の訪問リハ取扱件数
図4:兼業者の訪問リハ単位割合

(3)移動手段:
基本的に自動車を使用しているが,近くでは徒歩や自転車も使っていた.所有台数は1台~2台が主であるが,出動台数では半分の事業所が1台と少なくなった.駐車場代金については4割が事業所払いだが,利用者やリハ職員が払っている場合もあった.半数の事業所は事例がなく,「駐車場が無い利用者はとらない」という所もあった.

【考察】
今回の結果から,訪問リハサービス提供数が少ないことに関わる要素として,①事業所を有する病院・施設全体に占める訪問リハ従事職員の割合が3割と少ないこと②兼業が主だが訪問リハ兼業者の取得単位の総単位に占める割合が25%と少ないこと③自動車稼働台数が1~2台と少ないこと,の3点が分かった.どれも母体病院のヒト・モノをフル稼働しておらず,母体の病院が入院患者リハを優先している様子が伺える.
その理由として、当病院を例に挙げると,病院専業者は1日18単位をノルマとしており1日39,780円(但し脳血Ⅰで)となるが,これと訪問リハが同等になるには,1日6.3件(2回40分として)行う必要がある.全国の訪問リハ事業所を対象にした実績数の調査では一日平均約4件という結果もあり,収益の見合わないことが訪問リハに積極的に取り組めない一因と考えられる.
鹿児島市の訪問リハサービス見込み量は,平成22年度で35,366回/年であったものが,平成24年度は108,793回/年(鹿児島市の試算)であり,年を追って飛躍的に増加している.維持期患者の医療保険からの受け入れ先のひとつとして期待されている訪問リハであるので,訪問効率をあげられる,例えば,事業所に近い利用者,より同地域での利用者確保等々の努力をすることで採算のとれる体質を整備する必要がある.そのことが訪問リハサービス量を増やす第一歩と考える.