障害児・者を介護する保護者の介護負担調査
~小児訪問リハビリテーションの立場からの検討~
2)医療法人渓仁会 札幌西円山病院 リハビリテーション部 訪問リハビリテーションさくら 理学療法士
【はじめに】
小児訪問リハビリテーション(以下、リハとする)では、在宅で生活する障害児・者へのリハ以外に、その生活を支え介護をしている保護者への援助も重要な役割の一つである。そのため、保護者の現状を把握し、保護者のニーズや家族の抱える介護負担について明確にしたいと考えた。
今回、小児訪問リハを利用する障害児・者の介護負担について調査を行ったので報告する。
【方法】
対象は当院小児訪問リハを利用する障害児・者の介護をしている保護者142名。平成23年3月からの約1ヶ月間でアンケート調査を実施。アンケートは自記式で、介護負担にはZarit介護負担尺度を使用し、CES-Dうつ病自己評価尺度、SF-8(健康関連QOL尺度)のほか、保護者の健康状態やニーズに関する質問を行った。
【結果】
回収数は107名、無効回答などの24名を除く83名を有効回答とし、集計を行った。介護を行っている保護者の平均年齢は45.8歳。小児訪問リハ利用者は平均年齢15.7歳。就学状況は、未就学6名、小学校24名、中学校16名、高校11名、社会人が26名であった。疾患の内訳は、脳性麻痺29名、脳原性疾患27名、染色体異常6名、神経・筋疾患13名、その他8名であった。利用者のFIM総得点の平均は38.6点。痰の吸引や胃瘻、人工呼吸器の使用など、何らかの医療行為を必要とする利用者は47.6%であった。
介護者のZarit介護負担尺度では、やや中等度が半数以上を占めていた。
精神的負担については、日常的に負担と感じている割合は16%であったが、CES-Dうつ病自己評価尺度では約4割がうつ傾向という結果となった。
自由回答として福祉・教育のあり方に対しての思いや現在の心配事を記入していただいた中では、「通学の条件として保護者の常時付き添いが必要とされること」や、「保護者の体調不良時に介護や生活が困難になること」その場合に「利用したいショートステイも施設が少なく、医療行為がある場合は制限が生じる」などが多くみられた。他にも、現状の制度への不満や「保護者自身の社会復帰はこのまま不可能なのだと感じている」、という意見もあった。
【考察】
当院小児訪問リハの利用者は、全体的に介護度が重度であり、日常生活動作の介助量が多いことで身体的負担が増大し、医療ケアや介護の多さから生活内の拘束時間が多くなっていると予測される。特に他の介護者がいても、吸引などの医療行為ができる介護者が限られるなどの要因から、利用者と離れて過ごす時間が制限されていた。
精神的負担については約4割がうつ傾向にあるとの結果から、家族の精神的なフォローも長期の介護を考える上で重要であると考える。訪問時に家族の思いの傾聴や相談のほかに、他サービスの情報提供や家族同士でのピアカウンセリングの場の提供などのフォローも支援として行っていく必要性が考えられる。
希望サービスにおいては、移送や入浴など移乗動作を考えると身体的な負担が大きい項目に関するサービスの希望が多くみられ、デイサービス・ショートステイ・見守りなど、数時間~数日間のまとまった休息や社会参加機会、緊急時の支援を求めていることがわかった。
在宅では家庭環境により介護状況や支援体制も異なり多様化しており、介護度と介護負担感が必ずしも比例しているわけではなかった。特に小児分野においては「介護」ではなく「育児」という認識で保護者は日々の介護を行っていることも多く、介護負担として認識しにくいことも考えられる。
【まとめ】
今回、障害児・者を介護する保護者の精神・身体状況や介護負担について数値化するとともに、現状を知ることが出来た。
障害児・者の多くは学齢期を過ぎるとリハサービスなど医療サービスが減少することが多く、養護学校卒業後の支援体制の変化、通所への移行や福祉サービスの利用なども社会生活を送る上で大きな影響がある。また、経年的変化により、成長・老化などの心身機能の変化ともに介護者の高齢化が予測される。このことを踏まえ、訪問リハにおける保護者の援助方法を更に検討していきたい。