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ジャーナルハイライト
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PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.6 A1(Jun. 07,2013)

急性期病院の担当者が実施する短期間の訪問リハビリの検討

著者:池上 泰友 氏(写真)1),北浦 重孝 氏1),井上 健太 氏2),長岡 正子 氏1),篠原 信平 氏1),清木 宏徳 氏3),中田 みずき 氏1),清水 富男 氏4)(MD)
1)社会医療法人愛仁会 千船病院 リハビリテーション科
2)社会医療法人愛仁会 介護老人保険施設ユーアイ
3)光市立大和総合病院
4)社会医療法人愛仁会 千船病院 整形外科
key words:急性期病院,短期間,訪問リハビリ

【目的】
急性期病院から在宅への移行はまだ充実しているとは言えず、多くのセラピストは退院後のリハビに不安を持っていると報告されている1).そんな中、急性期病院の当院ではリハビリが必要な患者に対して担当者が継続して一ヶ月訪問リハビリ(訪問リハ)をできるシステムを導入している.急性期病院を退院後,短期間でも在宅支援することは重要である.そこで本研究では,短期間の訪問リハの実態調査を行い,訪問リハスタッフの役割を検討した.

【方法】
対象は平成19年1月から平成22年12月までに急性期病院を退院し訪問リハを実施した42名のうち,一ヶ月以内で終了した対象者を終了群24名(男性5名,女性19名,平均年齢80.7±7.1歳),一ヶ月以上継続した対象者を継続群18名(男性5名,女性13名,平均年齢80.6±7.7歳)に分類した.対象者の属性情報を表1に示した.調査項目は身体的要因として痴呆老人の日常生活自立度,退院・終了時のFIM,サービスに関する要因として訪問期間,訪問回数とした.加えて,終了理由,継続理由,実施内容,終了後の方向性を担当PT7名(経験年数4年11ヶ月~18年11ヶ月)に対してアンケート調査を実施した.統計解析はwilcoxon符号順位和検定,Mann-Whitney順位和検定,χ2検定,Kruskal Wallis順位検定を行った.

表1:対象者の基本情報

【結果】
訪問リハ期間は終了群20.6±10.8日,継続群49.5±14.8日であった.訪問回数は終了群2.1±0.8回/週,継続群1.8±0.7回/週であった.退院時と終了時のFIMの比較では両群ともに有意に向上していた(p<0.05).一方,退院・終了時のFIMの群間比較ではどちらも有意差を認めなかった(図1).FIMの下位項目では移動,トイレ動作が有意に改善していた(p<0.05).

図1:終了群と継続群の退院時から訪問リハ終了時におけるFIMの変化

アンケート調査より終了群の終了理由は,「期間が限定されていた」54%,「目標達成」50%であった.継続群の継続理由は「目標未達成」57%,「本人・家族の意向」50%であった(図2).終了群,継続群の終了後の方向性は施設利用(29.2%,17%),他事業所での訪問リハ(25%,40%)であった(図3)

図2:終了群の終了理由と継続群の継続理由
図3:図3:訪問リハ終了後の方向性

【考察】
病院を退院した直後の在宅生活ではADLが低下する利用者が多いのだが2),今回の結果より訪問リハの終了群,継続群のFIMで両群とも改善を認めた.これは退院直後に短期間介入することで低下するADLを改善できる可能性を示唆している.一方,退院・終了時のFIMの群間比較で有意差を認めなかったことより,ADLが改善しても目標設定や患者・家族の意向が大きく影響して継続していたことが明らかになった.また,短期間の訪問リハ終了後は半数以上が施設や事業所のサービスに移行していたことが判った.つまり,短期間の訪問リハでは目標設定が重要であり,訪問リハ終了後も患者,家族が安心して在宅生活が送れるような配慮が必要と考える.以上のことより,短期間の訪問リハは目標を明確にして早い段階で他サービスへの移行を検討し,支援スタッフと連携をとっていくことが重要と考える.

短期間でも担当スタッフが継続して訪問できる支援システムの構築は,治療リハから生活リハへと視点を変えていくセラピストの能力も要求されるのだが,患者,家族に対して在宅生活での支援体制づくりの一歩になると考える.

●参考文献
1)老人保健健康増進等事業(2013).「地域におけるリハビリテーション提供の在り方に関する調査研究事業」の調査.理学療法士協会オンライン.入手先http://www.japanpt.or.jp/(参照2014-03)
2)佐藤健三,訪問リハビリテーション,地域リハ 1(6):475-478,2006