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ジャーナルハイライト
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Article
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.4 A3(Apr. 19,2013)

訪問リハビリテーション利用者の要介護度に関する調査から見えた他職種連携の重要性

著者:増原 俊幸 氏(写真),今田 健 氏,竹内 茂伸 氏
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
key words:訪問リハビリテーション,要介護度,他職種連携

【はじめに】
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)は年単位の長期に渡りサービスを提供する場合があり,その間に利用者の要介護度が変化することもある.要介護度の変化にどのような要因が影響しているのかを明らかにするため,当院訪問リハの利用期間が1年以上の利用者を対象として調査を行った.

【対象と方法】
対象は2010年4月から2011年4月までの間当院訪問リハを利用していた48名とした(男性27名,女性21名,平均年齢75.2±9.9歳).2010年4月と2011年4月における対象者の要介護度を比較し,2010年4月から1段階以上下がったものを改善群,1段階以上上がったものを重度化群,変化がなかったものを維持群とした.各群の平均年齢,要介護度別割合,訪問リハ利用頻度(20分を1回とした1週間当たりの平均利用回数),訪問リハ以外の訪問系,通所系サービス利用の有無,認知症高齢者の日常生活自立度を用いて認知症の有無について調査を行った.

【結果】
各群の人数は改善群8名,重度化群2名,維持群38名であった(図1).平均年齢は改善群72.1歳,重度化群83.5歳,維持群76.1歳.要介護度別割合について,改善群は要介護2と要介護3が約90%を占めていた.重度化群では要介護3と要介護4がそれぞれ50%であった.維持群では要介護4と要介護5が50%以上を占めていた(図2).訪問リハの利用頻度は改善群2.9回,重度化群3回,維持群2.9回であった.訪問リハ以外のサービス利用率について,改善群では訪問系サービスに比べ通所系サービスの利用率が高く,重度化群ではそれとは逆に通所系サービスに比べ訪問系サービスの利用率が高い傾向が認められた.維持群では通所系,訪問系サービスともに利用率は30~40%であった(図3).認知症高齢者の日常生活自立度では,改善群は自立とⅠが約90%を占めていた.重度化群はⅡbとMが50%ずつであった.維持群ではⅡb~Mが50%以上を占めていた(図4).

図1:各群の人数の割合
図2:各群の要介護度別割合
図3:各群の訪問リハ以外のサービス利用率 (複数利用あり)
図4:各群の認知症高齢者の日常生活自立度

【考察】
改善群は中等度の要介護状態にあり認知機能が比較的保たれている72歳前後の利用者が多かった.その一方,重度化群,維持群では重度の要介護状態にあり,認知機能の低下が認められる75歳以上の利用者が多い傾向が認められた.以上より,要介護度の変化には元々の要介護度や年齢,認知症の有無などが影響を及ぼすことが示唆された.唐澤ら1)は通所リハビリテーション利用者において要介護度が重度化する要因として認知症を挙げており,今回の結果は同様の傾向を示した.
また,今回の結果より重度化群では50%,維持群では約55%を要介護4,5の重度要介護者が占めていた.石附ら2)は要介護4以上の重度要介護者が長期間在宅生活を継続できるかどうかは介護者の心理的,身体的,社会的な状況によって左右されると報告している.要介護度の改善は容易ではないが訪問リハスタッフの役割としては利用者を支える家族に対して介助指導を行い,介護者の負担軽減を図っていくことが重要であると考える.また平成24年度の介護報酬改定により,訪問リハスタッフと訪問介護スタッフが共に利用者宅を訪問し,両者が共同で訪問介護計画を作成した場合の加算が新設された.今回の調査から重度化群では訪問系サービスの利用率が高く,維持群では通所系,訪問系のサービス利用率がいずれも30~40%であった.それらのサービス提供スタッフと連携して利用者を支援することの重要性が今後ますます高まっていくと考える.

●参考文献
1)唐澤裕子,今井武志,小林克守,他:通所リハビリテーション継続利用者における18ヶ月間の要介護度変化について.理学療法群馬21:20-27,2010
2)石附敬,和気純子,遠藤英俊:重度介護高齢者の在宅生活の長期継続に関連する要因.老年社会科学31(3):359-365,2009