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ジャーナルハイライト
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Letter
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.3 L1(Mar. 08,2013)

手指中節骨骨折のMP・DIP関節への影響

著者:草川 裕也 氏1),奥村 修也 氏1),原田 康江 氏1),米田 香苗 氏1),北出 知也 氏1),高橋 勇二 氏2)
1)聖隷浜松病院 リハビリテーション部
2)浜松市リハビリテーション病院 リハビリテーション科
key words:手指中節骨骨折,MP関節,DIP関節

手指中節骨骨折において、疫学調査を行ったDobynsら(1983)の報告によると、関節内骨折が206名、骨幹端から骨幹部にかけての骨折が66名であり、関節内骨折の方が、高頻度に発生している。加えて、セラピィや治療成績に関する報告は、難渋するPIP関節内骨折に関するものがほとんどである。一方、発生頻度の点などから、PIP関節外骨折に関する報告は少ない。そこで、本研究では、PIP関節内骨折とPIP関節外骨折の両者を比較し、手指中節骨骨折例の骨折部別の治療成績とセラピィの注意点を検討した。

【本文】
2007年1月から2011年10月までに、当院でセラピィを行い、研究に関し、同意の得られた手指中節骨骨折患者54名55指(平均年齢30.1歳)を対象とした。PIP関節内骨折群は44指であり、そのうち観血治療例は27指、保存治療例は17指で、セラピィ施行期間は平均16.9週であった。一方、PIP関節外骨折群は11指であり、うち観血治療例は5指、保存治療例は6指で、セラピィ施行期間は平均20.4週であった。なお、PIP関節外骨折例のうち、DIP関節内骨折例、ならびに同一指の基節骨・末節骨骨折を合併している症例は除外した。このPIP関節内骨折群、PIP関節外骨折群の各症例について、セラピィ最終時のMP関節、PIP関節、DIP関節それぞれの自動運動関節可動域から、可動域の患側/健側比を求め、PIP関節内骨折群とPIP関節外骨折群の比較を行った。
最も患側/健側比が高値であったのは、PIP関節内骨折群のMP関節であり、100%を超えた(図1)

図1:調査結果

これは、骨折部の痛みやPIP関節の拘縮により、PIP関節の運動が困難となり、手指屈曲練習時に、深指屈筋、浅指屈筋や虫様筋がMP関節屈曲運動に、集中的に作用したために生じた現象と考えられた。そのため、PIP関節内骨折において、効果的にDIP・PIP関節の可動域訓練を行う方法として、骨折部の安定が得られてから、MP関節の運動を装具などで制限するという方法が提案できるのではないかと考えた(図2)

図2:MP関節の運動を制限する装具の一例

一方、最も低値であったのは、PIP関節外骨折群のDIP関節であった(図1)。その原因としては、PIP関節内骨折と共通するものとして、伸筋腱側索線維の骨折部周囲での癒着や斜支靱帯の短縮が関与していると考えられるが、それ以外に、痛みや腫脹によりDIP関節運動が妨げられたり、DIP関節を含んだ外固定が必要となったりすることが原因と考えられた。そのようなDIP関節可動域制限の予防として、過去の報告においては、早期からのDIP関節単独運動が重要であると多く述べられているが、そのほとんどがPIP関節内骨折例を対象としたものである。当然PIP関節内骨折においては、早期からのPIP関節運動が困難であり、それが理由でDIP関節単独運動が推奨されてきたと考えられた。そのため、PIP関節外骨折においては、PIP関節内骨折と同様に、DIP関節の単独運動を行うのみでなく、医師と検討し、できるだけ早期からPIP関節と同時に屈曲伸展運動を行う必要があると考えられた。伸筋腱側索線維、斜支靱帯ともに基節骨側からPIP関節を超えて末梢へと向かう。故に、PIP関節運動も伸筋腱側索線維、斜支靱帯の癒着予防に必要であると考えられた(図3)

図3:IP関節運動の必要性

●参考文献
1)Dobyns, J. H., et al : Fractures and dislocation of the wrist and hand, then and now. J. Hand Surg 8 : 687-692, 1983
2)鈴木雅人・他 : DIP関節単独運動を用いたハンドセラピィ手技の解剖学的検討.第10回東海北陸作業療法学会 : 69, 2010
3)茶木正樹・他 : 基節骨骨折・PIP関節脱臼骨折における術後早期のDIP関節運動の有用性.第22回日本ハンドセラピィ学会学術集会抄録集 : 38, 2010
4)土屋一郎 : 末節,中節骨骨折について-PIP関節脱臼骨折,槌指を除く-, 三浦隆行 (編) : 整形外科MOOK 64 手・手関節の骨折・脱臼, pp 183-194, 金原出版, 1992