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ジャーナルハイライト
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Article
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.3 A1(Mar. 01,2013)

『高次脳機能障害生活支援員養成事業』における高次脳機能障害者支援ネットワーク作り

―高次脳機能障害者支援普及事業「専門的リハビリテーションの充実」モデル事業から―

著者:工藤 美和 氏(写真)(OT)1)2),粟沢 広之 氏(OT)1)2),伊藤 正一 氏(MSW)1)3),進藤 晃 氏(MD)1)4)
1)西多摩高次脳機能障害支援センター
2)医療法人財団利定会 大久野病院 リハビリテーション科
3)医療法人財団利定会 大久野病院 医療相談室
4)医療法人財団利定会 大久野病院
key words:高次脳機能障害者支援,地域,ネットワーク

医療法人財団利定会大久野病院(以下,当院)では,平成22年度から2ヵ年,東京都が二次保健医療圏の2圏域(区西南部保健医療圏域,西多摩保健医療圏域・図1)で実施した単独事業「高次脳機能障害者支援普及事業『専門的リハビリテーションの充実』モデル事業(以下,モデル事業)」を受託し,院内に「西多摩高次脳機能障害支援センター」を開設,運営した.その事業において『高次脳機能障害生活支援員養成事業(以下,生活支援員養成事業)』を実施し,西多摩保健医療圏域内に66名の「高次脳機能障害生活支援員(以下,生活支援員)」を養成することができた.今回,生活支援員養成事業における支援ネットワーク作りの事業内容とその成果,今後について考察する.

図1

【高次脳機能障害生活支援員養成事業内容】
1)目的
高次脳機能障害の当事者(ご家族を含む)から様々な相談を受けた際に適切なアドバイスやコーディネートなどを行うことができる支援者を養成することを目的とし,その具体的な業務内容として,当事者への相談支援,高次脳機能障害全般に関する啓蒙や理解促進などを挙げた(図2).

図2

2)高次脳機能障害生活支援員になるには
この生活支援員の認定は当センター独自の制度であり,『高次脳機能障害生活支援員養成講座(以下,養成講座)』と称した全10回のカリキュラム(図3)の7割以上の受講および養成講座内の最初のカリキュラムである『高次脳機能障害(総論)』の必修,年一回の事例報告書の提出の3つの要件を満たした方を認定することとした.
なお,平成22年度は医療従事者を対象に,23年度は地域の行政職,福祉・介護従事者を対象に受講生の募集を行ったため,カリキュラムは平成22年度と23年度では若干異なっている.

3)2ヵ年の成果
平成22年度では30名,23年度では36名が養成講座を修了し,計66名を生活支援員として認定することができ(図4),2ヵ年の総受講者数76名のうち91%が修了したことになる.

図4

【考察】
今回の生活支援員養成事業では延べ66名の生活支援員を養成することができた.
東京都では都内在住の高次脳機能障害者を約50,000人と推定しており(平成18年調べ),これを西多摩保健医療圏域の人口にあてはめてみると約1,500人の高次脳機能障害者が西多摩保健医療圏域内に生活していると推定することができる.その人数に対し今回養成した生活支援員の人数と比較してみると多くの支援者を地域に養成することができたと考える.また,この生活支援員は医療機関内に留まらず地域の行政や障害・介護など様々な分野の従事者を生活支援員として養成することができた(図5,6).東京都が実施したモデル事業の目的は「地域で高次脳機能障害者の特性に対応した切れ目のないリハビリテーションを提供できる体制の充実」であり,生活支援員養成事業ではこの目的の第一歩を達成したものと考えている.
平成22年度から2ヶ年続いたこのモデル事業は平成24年度から本事業へと移行し,引き続き当院が行なっている.今後,生活支援員の強化として知識・技術の向上,活動調査,連絡会などを実施しながら実際の事例を通してネットワークの強化を行い,これまでも高次脳機能障害者を支援してきた地域の方々と一緒に高次脳機能障害者支援のさらなる充実を図っていきたい.

図5
図6