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ジャーナルハイライト
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Article
PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.2 A7(Feb. 22,2013)

自宅での調理獲得へのプロセス

~通所リハビリテーションにおける取り組み~

著者:西 聡太 氏(写真)(OT)1),橋本 侑実 氏(OT)1),南部 隼平 氏(PT)1),大塚 亜須香 氏(OT)1),満丸 龍太 氏(OT)1),赤瀬 諒市 氏(PT)1),辻本 真也 氏(PT)1),宮部 伸子 氏(OT)1),池島 由貴 氏(PT)1),角 洋子 氏(PT)1),真栄城 一郎 氏(PT)1),野尻 晋一 氏(PT)1),山永 裕明 氏(MD)1)
1)介護老人保健施設 清雅苑
key words:自宅,調理獲得,通所リハビリテーション

【はじめに】
生活期において身体機能の維持・向上だけでなく対象者が以前まで行っていた活動や家庭内役割を再獲得・維持していくことは重要である。通所リハビリテーション(以下、通所リハ)では、利用者同士の交流や活動を通じて自宅で行っているIADL動作の情報交換や再獲得に繋げる活動を展開できる場である。今回、通所リハにおいて家庭内役割としての調理活動をピアケアのグループ活動形成への介入により支援を試みたので報告する。

【対象】
対象は、当通所リハ利用中の脳血管疾患により片麻痺を呈した女性4名(平均年齢60.7歳、要介護度:1~2、FIM:平均104.3点)である。内3名は調理への支援を行ったが自宅での役割として定着できていなかった者(以下、非定着者)。1名はすでに調理を行っており他3名の支援者(以下、支援者)とした。「活動の趣旨」「個人情報の保護」について説明を行い書面にて承諾を得ている。

【活動内容と方法】
活動前にアンケートにて自宅での調理実施状況を聴取した。内容は(1)自宅での頻度、(2)使用している器具、(3)料理のカテゴリー、(4)行いにくい動作とした。アンケート結果から、調理を行うにあたり困難だと考える動作や調理器具・食材を抽出し、話し合い・実技練習を週1回、計8回実施した。話し合いでは、OTの視点からの動作方法と支援者が実際に行っている方法を紹介した。実技練習では、支援者と共に調理の各動作について実践を踏まえた助言を行った。その後、月3回のミーティングと月1回の調理活動を1クールとし、計4回実施した。また、自宅での実施を促す目的で自己評価シートを作成した。内容は自宅で行った調理について家族と評価できるよう工夫し、ミーティング時に持参する事とした。また、活動後に再度アンケートを実施し活動前と比較した。(図1)

図1

【結果】
アンケート調査では、活動前は支援者と比較して非定着者では使用している器具・料理カテゴリーが少なく、行いにくい動作が多かった。活動後の非定着者では自宅での頻度、器具の種類や料理のカテゴリーに増加がみられ、行いにくい動作が減少した。
非定着者は経過とともにグループ内で問題解決を行う様子がみられ、自己評価シートを用いることで、自宅での調理活動の状況や家族の関わりが確認できた。支援者に関しては、意欲の向上がみられ他の利用者にも教えたいとの希望が聞かれた。(図2)

図2

【考察】
活動前のアンケートによって非定着者の自宅調理における阻害因子が把握できた。実際の調理活動を行う前に阻害因子を解決するための話し合い・実技練習を行うことでスムーズな活動への発展が促せたと考える。また、話し合い・実技練習を行うことで支援者が助言を行いやすい環境を作り役割の意識化につながったと考える。
調理活動では、自宅で行う調理を想定した課題と段階付けを行い実施してきた。同じ境遇にある利用者同士が、設定した課題に対し話し合いながら問題解決を行うことと、支援者の存在があることで具体的な助言ができたことが、苦手な動作の改善につながり自宅での実施まで促せた要因であると考える。また、自己評価シートの使用は、その内容をグループ内で共有し利用者同士が賞賛することで意欲の向上を促せた。このことが、家族との関わりを通して自宅での調理頻度の増加につながったと考えられる。山根らは「集団のプロセスで出会う失敗や問題は、それをどのように集団として乗りこえるか、そのプロセスそのものが集団を用いる最大の効果である。」と述べている。通所リハでは、利用者同士の普遍的体験やピアケアを目的とした関わりを促すグループ活動を行うことができ、活動を阻害する個々の問題点に対しては個別リハビリテーションにて目的を共有し解決していくことが可能である。また、自宅での実施に関しては家族の協力や環境因子が課題となる。これに対しては自己評価シートでの情報提供に加えて今後は通所リハで行う訪問指導による関わりや訪問リハビリテーションの導入を行うことで自宅での調理獲得をよりスムーズに促すことができると考える。このような特徴を生かした活動を通して調理に限らず在宅でのIADL動作や役割の再獲得、地域での活動へとつなげることが可能であると考える。(図3)

図3