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PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.2 A6(Feb. 22,2013)

熊本県における高齢者の運動器機能

〜評価統一およびデータ分析の概要〜

著者:馬場 晋平 氏(写真)(OT)1),嶋村 梨紗 氏(PT)1),芳田 なおみ 氏(PT)1),大串 幹 氏(MD)1),西 佳子 氏(MD)1),水田 博志 氏(MD)1),中川 淳子 氏2),佐﨑 一晴 氏2)
1)熊本大学医学部附属病院 リハビリテーション部
2)熊本県健康福祉部長寿社会局 認知症対策・地域ケア推進課
key words:運動機能評価,高齢者,介護予防事業

【はじめに】
平成12年の介護保険導入に合わせて、熊本県では地域リハ支援体制(図1)が構築され、県医師会に委託された地域リハ支援センターを中心に、県委託の各圏域の広域支援センターが、市町村や介護予防事業所,包括支援センターへ技術支援を行っている。介護予防事業は、平成18年より地域リハ事業の中核におかれ、一次予防,二次予防,新予防給付の高齢者(図2)を対象に、様々なプログラム(運動機能向上,口腔機能向上,栄養改善,閉じこもり予防・支援,認知機能低下予防・支援,うつ予防・支援など(図3))が進められている。我々は、効果判定が行いやすくフィードバックがかけやすいと思われる運動機能向上プログラムに着目し、介護予防事業の評価として、熊本県内で評価項目・方法の統一を図り、参加者の運動機能データを集積しているためその概要を示し報告する。

図1:熊本県の地域リハ支援体制
図2:介護予防事業の対象者
図3

【方法】

  1. 県内で運動機能向上プログラムを実施している事業所へ、プログラムと運動機能評価について現状調査のアンケートを実施(図4,5)
    図4:方法
    図5:アンケート結果 [各事業の概要]
  2. 評価項目の選定は、厚生労働省『H21年 介護予防マニュアル』と、アンケート結果の事業所で実際に行われていた評価項目の妥当性と汎用度を考慮して選定した(図6)
    図6:運動器機能評価項目の設定
  3. 評価項目・方法の統一を図るためマニュアルを作成(図7)し、介護予防事業を行っている事業所を対象に研修会を開催(図8)
    図7:マニュアルの作成
    図8:研修会の開催
  4. 介護予防事業を行っている各事業所で統一した評価項目・方法で対象者の運動器機能評価を実施。
  5. 実施された評価結果のデータを収集し比較・分析を実施。

平成22年は開眼片脚立位時間(片脚立位),Timed up and go test(TUG),5m通常・最大歩行時間(歩行時間通常・最大),握力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)を評価項目とした。平成23年は前年の運動器機能評価項目に、運動機能に影響を及ぼすと予想される栄養評価(簡易栄養状態評価表Mini Nutritional Assessment(MNA))(図9)と認知評価(SWEET16)(図10),さらに二次予防高齢者の判定に用いられている『生活機能25チェックリスト』(図11)を追加した。

図9:MNAについて
図10:SWEET16について
図11:生活機能チェックリストについて

【結果】

  1. 1)アンケートは、県内10/10圏域の広域支援センターと熊本市及び39/45市町村から回答を得た。各圏域及び市町村で運動器機能向上プログラムを実施していたが、評価項目・方法を含めばらつきがあり、運動器機能評価におけるデータとして比較・分析が行えない状況で、評価を行っているスタッフも様々でデータの信憑性も低い状況であった。
  2. 2)運動器機能評価のデータは、平成22年は、県内9/10圏域の広域支援センターと熊本市及び27/45市町村から2638人のデータが得られ、データクリーニングをした2386人(一次予防1153人,二次305人,新予防928人)について分析を行った。
    平成23年は、県内10/10圏域の広域支援センターと熊本市及び40/45市町村から6538人のデータが得られ、データクリーニングをした6390人(一次予防3625人,二次予防982人,新予防給付1783人)について分析を行った。

【考察】
今回、我々は熊本県で介護予防事業としての運動機能向上プログラムにおける評価項目・方法の統一を図り、熊本県内よりH22年,H23年と2年間に渡り介護予防事業に参加する高齢者より運動機能における多数のデータが得られた。介護予防とは、『要介護者の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらに軽減させること』として定義される。そのため、介護予防に関わる我々専門職は、利用者の意欲の程度とその背景を配慮したうえで積極的な働きかけを行うことが求められる。

●参考文献
1) 大渕 修一ほか:運動器の機能向上マニュアル(改訂版). 東京都老人総合研究所 介護予防緊急対策室,H21.3
2) 介護予防マニュアル概要版. 介護予防マニュアルの改訂に関する研究班 H21.3
3) 鈴木隆雄ほか:介護予防マニュアル改訂版. 介護予防マニュアル改訂委員会 H24.3
4) ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンスカンパニー:MNA-SF® (Mini Nutritional Assessment-Short Form®)  HP:http://www.nestlehealthscience.jp/mna/
5) Fong TG, et al. Development and Validation of a Brief Cognitive Assessment Tool: The Sweet 16. Arch Intern Med. Published online November 8, 2010.
6) 熊本県地域リハビリテーション支援センター HP:http://www.kumamoto.med.or.jp/rehabili/