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PT-OT-ST Channel Online Journal Vol.2 No.2 A5(Feb. 15,2013)

急性期病院における乳癌患者のリハビリテーションに関するアンケート調査

著者:山田 将之 氏(写真)
藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科
key words:急性期病院,乳癌患者,リハビリテーション

1.はじめに
当院では、 全ての乳癌の手術をした患者に対し、手術後翌日よりリハビリテーション(以下リハビリ)を実施している。 術前に医師が上肢機能を評価し、手術翌日から療法士による訓練を開始する。 療法士は手術後翌日・退院時・退院1カ月後に上肢機能を評価する。退院時には生活上の注意点と自宅で行うトレーニングを指導し、 術後1カ月評価の上肢機能に問題がみられなければ訓練が終了となる。(図1) 現在、リハビリに対する満足度や患者の持っている不安などの心情についての報告は少ない。そのため、今回我々はリハビリに対する満足度と患者が抱える不安や日常生活で困っていることについてアンケート調査を行い、 リハビリの内容や開始時期が適切であったのかを検討したので報告する。

図1:当院の乳癌患者に対するリハビリの流れ

2.対象と方法
対象は2010年4月~2011年3月までに当院でリハビリを受けた乳癌術後の女性患者150名で、平均年齢は56.2±14.3歳であった。 本研究は当院の倫理委員会の承諾を受け、書面でインフォームドコンセントを得た対象者について実施した。アンケートの内容は、 リハビリに対する満足度・リハビリの開始時期・訓練時間の長さの妥当性・退院後の自主トレーニングの施行頻度・自主トレーニングの難易度・訓練終了後の痛みの有無・療法士が異性の場合どう感じるか・日常生活において不安に感じていること・家事動作において行いにくいと感じたことの9項目で、 訓練終了時にアンケート調査を実施した。

3.結果
リハビリを受けて満足と感じた患者は96.6%で、 94.6%の患者が開始時期は適切であったと回答した。(図2・3) 訓練時間の長さが妥当であると回答した患者は89.3%であった。退院後、自宅で毎日自主トレーニングを施行した患者は66.0%で、自主トレーニングが難しいと感じた患者は14.6%であった。 自主トレーニング後痛みが出現した患者は12.6%で、痛みが出現しなかった患者は85.0%であった。 同性の療法士に担当してほしいと回答した患者は40.0%であり、どちらでも良いと回答した患者は49.0%であった。(図4) 日常生活において不安に感じている患者は16.0%で、将来について不安を抱いている・リンパ浮腫にならないか不安である・いつになったら重たいものを持っていいのかわからない等の回答が得られた。家事動作を行いにくいと感じた患者は33.3%で、高い所に手を伸ばす・洗濯物を干す・重い物を持つ・洋服の着脱の順に多くの回答が得られた。

図2:リハビリに対する満足度
図3:リハビリの開始時期
図4:担当療法士の性別

4.考察
リハビリの満足度と訓練の開始時期が妥当であったと回答した患者が90%以上であったこと、訓練や自主トレーニング後に痛みが出現した患者が少ないことから、早期よりリハビリを開始することや当院が提供しているリハビリに問題がないことが示唆された。担当療法士の性別について、患者の約半数は男女どちらの療法士が担当しても良いとの結果が得られたが、40%の患者は同性の療法士を希望した。その多くは40歳以内の若い患者であったことから、年齢の若い患者に対しては同性の療法士が担当する等の配慮が必要であると思われた。また、日常生活において不安を感じていると回答した患者は15%以上で、退院後30%以上の患者が家事動作を行いにくいとの回答があった。これは、対象者が全て女性であり自宅で家事を行う必要性が高く、多くの患者が退院後すぐに様々な家事動作を行っていることが関係していると思われた。
これらのアンケートを参考にして、生活指導を含めた訓練内容を再度検討し、患者の不安を少しでも取り除き生活の幅を広げることができるよう具体的な指導を行っていく。