佐賀県全県下での呼吸リハビリテーションへの取り組みについて
~研究会発足からNPO法人化しての活動報告~
2)佐賀大学医学部付属病院 先進総合機能回復センター
3)医療福祉専門学校 緑生館 理学療法学科
4)佐賀社会保険病院 リハビリテーション科
5)佐賀県立病院好生館 リハビリテーション科
6)京都橘大学 健康科学部 理学療法学科
7)長生堂渡辺医院 リハビリテーション科
8)神戸国際大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
9)社会保険浦之崎病院 呼吸器科
10)佐賀大学医学部付属病院 呼吸器内科
佐賀県下では近年まで呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)を積極的に行えている施設が少なく、また、急性期から維持期まで連携して呼吸リハが提供できている地域もほとんどなかった。平成20年度より佐賀県下で呼吸リハを推進すべく、研究会発足からNPO法人化まで様々な取り組みを行ってきたので報告する。
表1:呼吸リハビリテーション研修会:H22年度
テーマ | 講師 | |
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第1回 | 呼吸器の解剖と生理 | Dr |
第2回 | 呼吸器疾患の診断と治療 | Dr |
第3回 | 肺機能検査、動脈血ガスの見方 | PT |
第4回 | 在宅酸素療法 | PT |
第5回 | 人工呼吸器の基礎知識 | ME |
第6回 | 呼吸リハビリテーションの評価 | PT |
第7回 | 呼吸リハビリテーションの実際 | PT |
【活動内容】
平成20年度より佐賀県の呼吸リハを担うPTを育成する目的で佐賀県中部、南部地区のPTを中心として10数名で呼吸リハビリテーションリーダー研究会を発足。月1回、その中核メンバーにより、解剖生理などの基礎的な内容の講義練習から始め、徐々に研究発表や英文抄読などの応用的な内容を行った。次に、地域における医療従事者に対する呼吸リハの技能向上を目的として、全7回の呼吸リハビリテーション研修会を開催。この研修会は平成20年度より平成23年度まで開催し、平成21年度以降は多職種を対象に研修会を行った(表1)。このリーダー研究会メンバーに医師、看護師、臨床工学技士も加わり、平成22年度より佐賀包括的呼吸リハビリテーション研究会を発足。佐賀大学医学部付属病院を基幹病院として呼吸リハ教育入院を開始し、セルフケア日誌や医療連携ノート、運動療法DVDを作成(図1、2、3)。
この年度より年1回外部より講師を招聘し、講演会を開催。平成23年度からは実技講習会を開催し、これは地域連携を行っていく上で統一した評価が行えることを目的とした。平成23年度より地域連携型呼吸リハビリテーションクリニカルパスを作成し、佐賀大学医学部附属病院を基幹病院として運用を開始。また、佐賀県薬剤師会の協力の元、吸入手技評価を標準化し、吸入手帳の作成・運用を開始した(図4)。
表2:みんなで学ぼう 呼吸ケア:H24年度
テーマ | 講師 | |
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第1回 | 呼吸ケアリハビリテーション | Dr |
第2回 | ADLトレーニング | OT |
第3回 | 呼吸理学療法 | PT |
第4回 | 呼吸疾患の薬物療法 | 薬剤師 |
第5回 | 呼吸疾患の栄養指導 | 管理栄養士、ST |
第6回 | 呼吸疾患の自己管理 | Ns |
平成24年度より佐賀県COPD地域診療体制整備事業(地域医療再生臨時特例交付金)への活動開始。また、研究会メンバーよりNPO法人はがくれ呼吸ケアネットを発足。これはさらなる施設横断的・職種横断的な呼吸ケアの実現を目標とし、今年度は県内2次医療圏ごとで在宅・多職種向けの全6回の研修会を企画・開催(表2)。他にも、市町村レベルで介護支援専門員や保健師への研修、一部市町村でのCOPD検診の実施、データ-ベース事業等の活動を行っている。
【結果】
当会主催の研修会開催数は年々増加しており、受講者数も多い時では200名を超える参加があり、病院関係者だけでなく在宅分野の方々の参加も増えている。各地区で研修会を開催するようになり、在宅分野での呼吸リハのニーズも増え、地域での医療連携活動も徐々に行われるようになってきた。NPO法人はがくれ呼吸ケアネットの会員数も徐々に増加し、平成24年7月末では50名を超えており、職種も理学療法士だけでなく、医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、作業療法士、管理栄養士、社会福祉士、介護支援専門員等と多職種にわたっている。
【おわりに】
理学療法士が立ち上げた研究会から、医師が加わったことで各職種や患者様の呼吸リハに対する認識が向上し、多職種がメンバーに加わってきたことで、多方面からのチームアプローチが徐々に可能となっている。今年度、NPO法人を発足したことにより組織的活動が明確化し、活動の場もさらに広がってきている。今後も各専門職種、各施設の強みを生かしながら、呼吸リハの社会的認知の向上、医療・介護関係者、地域住民への教育、医療圏ごとの病院と在宅分野の連携ネットワークの構築、地域でのCOPDの早期診断・治療体制等、今後一層推進出来ると考える。